20年の孤独
部屋で丸まれば僕の内臓を守れる?
浸食が始まっても世界が入ってこないといい。皮膚だけやるよ。
逃げるためじゃなく走っていられるあの子、長い髪がゆれるたび、みんな見ていた。
あの子の視線の先へ走っていった彼ら、今じゃ立派に誰かと生きている。
光る校庭、まつ毛にたまったあの子の影を、僕は放課後小石で留めといた。
足が3本でも早くは走れない。それなら1本誰かにあげて、優しさだけで許してもらおう。
待っていた手紙は届かず、挽肉300gが299円のチラシ。
悲喜こもごも、その情報、DNAの100万分の1に劣る。
僕の夕飯はハンバーグじゃない。
間に合うためじゃなく走っていられるあの子、長い髪がゆれるたび、みんな見ていた。
翳る校庭、口元にたまったあの子のため息、空気と混ざって夕日になった。
ひとり、たったひとり、髪は長くなって、毎夜ドライヤーに20分を人生から引き剥がされる。
髪が伸びても、皺が増えても、誰のメモリの容量も減らなくて、僕は手元の加工アプリを削除した。
あの子が走っていたあの校庭、この前、隕石が落ちて大きな空白になったって。
僕ひとり、空白をループ、掛け合わされない無意味と無意味。
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