音に時間を追わせていたら次々に去りゆきそこにはさっぱりとした静けさ わたしは乗っかり音が紡ぐチラつく景色にめまいと共に吐きそうな舌の上に生乾きの言葉を載せて あああんなにも静かに音に充ちていた世界に一つだけの器官をみなが携えて歩いて走って死んで埋められて 音に意味を譲ったあの日から響きだけを喋って聞いて私たちは音楽になった そう、舌が身体に譲ったそれが見ていいよ見てくれよと発熱して鳴り出したんだ がらんどうの祠 ネアンデルタール人が囁いた 反響し続け届いたことばが 太古
眠気のかたまりが顔の真ん中にあつまって世界を吸いとる 僕たちだけの真夜中が始まって何周だってできる あなたのまなざしを勝手に読み取って秘密をといた 眠くて重くて厚い、眠りたいのに心臓が運命に備えて体中に血流を送り込む 芯 臓 こんなにもたくさんを抱え込んで それは夜、眠るために、 芯から夢が紡げるよう、百夜でも、千夜でも、 ひとりで地獄の予行演習ができるよう、 何万回の痛みにも世界が耐えられるよう、 僕が走っておいたんだ 悪魔の輪郭をなぞれるよう、 踊りの練習をしたし
机の上の、空っぽのコップの中の水を飲んだのが昨日だったと思いだした。その容れものが昨日洗い物をしなかった私の怠惰の証かというとそれはそうなのかもしれないが気持ち悪さの原因はそれではない気がして、それは時空の歪み、今という時間についてこられていないコップ、今を生きていないコップという感じ、それが気持ち悪さの要因だと思う。 今、今、今まだ、今まだ着いてない、と今がまだそこに留まってたゆたっていた瞬間を経験したのだった、子供のころに。拡張された時間を通ったあの感覚をときどき大人
足の指先、爪が見る。遥かなる行き先。 膝小僧が聴く。皮膚の内側、血の流れる音。 太い腿、くびれない腰、たっぷり食べて時間を溜め込んで、 胃が消化しながら光りに変える。 背中を掻きながら這い登った音、 光と音じゃ、うるさいのは光、首筋がくすぐったそうに震える。 最後の直線を這い上がる匂い、ゴールしたら歩き出す。
何かが落下したとき、何かに代わって痛いふりをする身体が愉快で、わたしはわたしじゃないかもしれない可能性に賭けてどこまでもやろうとしてしまう。けれど場が望めば自然に能力が見合うということもあって、わたしがちいさいからちいさな家に住んでいるのではなく、家がちいさいからわたしはちいさなままなのかもしれない。ちいさな机でもインターネットは無限大だからおおきな物語が作れる。 耳の穴に人差し指をそっとさしこみ、その複雑な形を確かめながら月面クレーターのことを考えた。人々は、内耳に飼う
絆創膏をめくっては確かめる そこは腫れて膿んで飛び出す直前の情熱にあふれ 身体を開いて夜な夜な情熱と神秘を探す解剖医 生きていることを見失い段差を踏み外す 着地は地面と天国、墓場、どこがお好みですか そんなに確かめなくてもあります そんなに触らなくてもあるんです 赤ん坊から取り出した脳みそが豆腐みたいだ こんなに白くなりたいなぁ 生きているだけで汚れてしまう 好きなら好きなだけ早く汚れていく 土地に近いほど汚れやすい 染みのついた靴下、踊るためだ、黒くていい 言葉が巣食った黒
たわんだ唇をこじ開けた先にある歯という砦、互いにベクトルをぶつけあってギリギリと、痛いほどに食いしばる。この先の人体は別の時空です。わたしの、時空。わたしのすべて、わたしのおもちゃ。わたしのたましい。 脱いだ服を折りたたまないのは、それがわたしの抜け殻だから。瓶に詰めた蝉の抜け殻はあの夏に置いてきた。宝物がとつぜんグロテスクに歪んだ夏、子供と大人の境い目の夏。すべては夏に始まり終わるのかもしれない。きっと宇宙も夏に始まった。スコールの中、劇的に幕があがってしまうのだ。革命
僕らの平坦な日常 朝と昼と夜がくっついて離れやしない 自分より大きなものが太陽か月かってだけで 入眠と目覚めの壁は崩壊した 薔薇の花びらが枯れた 咲き誇ったその顔の裏で一枚萎れて垂れ下がった 句点も、読点もないままに腐っていく 萎れた花びらをつまみ 産まれてから毎日ビックリマークの君が囁く 「私の手のひらもいつか萎れるの?」 それまでにたくさんの読点を超えていかなければいけないね 「死ぬってなに?」 分からない 句点のようなもの 哀しい読点と愉快な☆マークがあるだろうね で
僕がここから出たのは 世界をとりいれるため 小石を 雑草を 街を 景色のすべてを 君を かたくなさで塗り固められた すべての窓 たったひとつ 三階の右の端 開いた窓が たったひとつ 目薬を待つ瞼のように たったひとつ 空気にまみれてしまうくらい小さな何か 例えば羽虫 いないのとなにも変わらない あのたったひとつ開いた窓から 君の内部へ侵入する あのたったひとつ開いた窓に向かって 僕のリズムが溢れ出す 紙と鉛筆で書き留めた何か 例えば言葉 ないのとなにも変わらない ダン
光りを受けて 光る線 蜘蛛の糸 光さえからめとって 花の茎、蟷螂の体、蝶の翅、 僕が簡単に奪えるもの 声が聞こえた バイバイ、バイバイ、 また明日! この部屋ではないどこかで 誰かが出会って別れている 見えない その声に バイバイと返した 僅かな力で奪えるものに命があるはずもなく 僕は庭で殺戮者ではなく幼いだけだった たゆたう声が 未来から届いた ハロー、ハロー、 誰かいる? 早く大きくなって地球を守って 僕は蜘蛛の糸をちぎって 犍陀多たちを 地獄に返した
踊りたがる体と言葉を紡ぎたがる脳が 同時に跳ねて空に頭をぶつける たったひとつのこの骨と筋肉と脂肪とその他 どうやって分け合えばいい 一つの体で完全ならば人類が滅びた後で 悲しむ必要なんてない これは恋でも愛でも望郷でもなく 哀しみでも喜びでも怒りでもなく 世界が溶け合うことを望むほどの孤独 踊りたがる脳と言葉を紡ぎたがる体が 同時に逆へ走って見えなくなる たったいっついのこの目と耳と手と足とその他 どうやって埋めればいい あすこの空き地 あすこの朽ちた家
大きな国にも戦はあるよと教えてあげたくて タイムマシンを作った何とか博士 憎悪で作り上げたその国で王様がノスタルジーに浸り思い出す あの憎しみはどこからきたんだったかな あの怒りはどこにいったんだろうかな 小さな執務室で大きな陰謀を練り上げ、 世界中に飛び火するように、解き放った 粘土細工の恨みが、苦しみが、 歩き出せば生命だった あとはみんながいなくなるのを待つばかり 瓦礫の下のくすぶった炎はまだ燃えている 国境のない未来を見てみようと タイムマシンに乗り込んだ何とか
太陽の匂いが嫌いでさ、暗闇に洗濯を干している 木を見上げると木漏れ日がまぶしくて 生きて生きて背が伸びて木を見下ろせる様になった 。で終わる 、で続く 恋が。で愛が、 産まれて。死が、 詩、詩、詩、詩、 あの時のあの輝いてた好きな気持ち。 全部。。。 みあたらない 終わり。と続き、は全然違うのに 魔法に興味がない人類 怒りは、 哀しみは、 喜びは。 楽しさは。 木が伸びて、僕も伸びて、追いかけっこ、、、 宇宙のほうは。。。 太陽に届くまでひとりぼっち 時間が
愛し合う なにもないこの荒野で だれもいない星で たったひとり とその他 生物と無生物の違い、もう見分けられない ロボットかもしれないな、ぼく 光りも会話も涼しさもガスももう間に合わない ずうっと先に行ってしまった部屋 水道から滴り落ちない水 本だけは同じ場所でじっとしている 手探りで懐かしいあの本を探す 懐かしいぼくの怒りが352ページ目に挟まっていた 懐かしいぼくの哀しみが巻末で解説されていた 蛇口をひらくと記憶が虹色に漏れ出した 不死鳥が夜更けに話しかけにきて 生
この、あの、それって言葉、それとも気持ち? 簡単に告白してしまうと、 あなたという地層が地滑りを起こすね。 曇りが淋しい。本当に? 悲しい。冷たい。違う、ひとりが好きなだけ。 楽しい。嬉しい。違う、あなたは永遠に孤独。 会いたいな、みんなに。 ほんとうは会いたくないんだけど。 部屋に無数に漂う雑音、どれが雨音か分かるの? 気づいたら部屋に取り残されて世界は終わった。 会いたかったかなあ。 誰かに。誰だっけ。 描いても歌っても正解はわたしだけ。 大いなる誤解と真実を抱き
部屋で丸まれば僕の内臓を守れる? 浸食が始まっても世界が入ってこないといい。皮膚だけやるよ。 逃げるためじゃなく走っていられるあの子、長い髪がゆれるたび、みんな見ていた。 あの子の視線の先へ走っていった彼ら、今じゃ立派に誰かと生きている。 光る校庭、まつ毛にたまったあの子の影を、僕は放課後小石で留めといた。 足が3本でも早くは走れない。それなら1本誰かにあげて、優しさだけで許してもらおう。 待っていた手紙は届かず、挽肉300gが299円のチラシ。 悲喜こもごも、その情報、