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(詩)あられ

今朝あられを見たよ
明け方はまだ雨だったのに
朝にはあられ、アラレ、霰になって
この地上に落っこちて来たよ

今朝あられを見たよ
あられはあられでも
小ちゃくって食べられないアラレ
霰くんと霰ちゃんたちが
白いしろおい粒粒になって

きっと寒がらせようとして
落ちて来たんだね
でもあんまり小さくて
おまけにあんまり慌てん坊だから
思わずくすくす笑ってしまった

そしたら霰たち怒って
頬っ辺膨らませて
顔まっ赤にしたから
自分たちの熱で融けてしまったよ

今朝あられを見たよ
あられは雪の子どもたち
雪っていう大人になる前の
だからあんなにころころ
小さな石粒みたいなんだね

あられは雨の宝石?
それとも涙の?
涙の宝石は
とてもとっても小さくて
すぐに融けて消えてゆく
地面に落ちたら
地面の熱でしゅっと
融けてお仕舞いだから

もっといっぱい
見ておけばよかったな
もっとしっかり
見ておけば良かった

あったかい間はずっと雨で
そのくせ寒くなったら
すぐ雪になってしまう
だからあられの命は
とってもとつても短いんだね

今朝あられを見たよ
お陰でなんだか嬉しくなった
きっと世の中のかなしみの
ごく僅かでも
涙の粒粒と化して
落ちて来たからなのかな
それとも人知れず
こっそりと泣いていた
誰かの頬っ辺
微笑ませるために
わざわざあられになって
落ちて来たからなのかしら

今朝、あられを見たよ
まっすぐに降って来て
あられに生まれて来たことが
あんまりあんまりにも嬉しくてさ
にこにこ弾けながら
急ぎ足でまだ早い
朝の中に融けていったよ

だから寝坊助には
見せてあげられない
ちょっといじわるで
そそっかしい
あられたち、だったよ

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