(詩)夏のかけらは

年を重ねてゆくたびに
夏のかけらが増えていくから

だあれもいなくなった時
一体わたしは何に
夏のいたみを慰めよう
一体何処に
夏の追憶をさがそう

したたり落ちる汗
まぶしい日射しの中に
きらりと光る虹の木漏れ陽
夕立の後に乾いてゆく
アスファルトのにおい
日暮れ前に残された
青空の最後のひとかけら

祝福でもなく
かなしみでもなく
夏が去ってゆく時に
人はみな
残された夏のかけらを
何処に捨ててゆくと
いうのだろう

記憶の迷路に
迷い込んだような
夏の終わりの
夕暮れ時に

わたしには
わたしなら
積もった夏のかけらは
遠い少年の日に失くした
あの灼熱の海岸線に

永久に流しそびれた
涙とともに放り捨てよう
永久に失くした
きみのかけらとともに
放り捨てるしか、ないらしい

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