『こっちへお入り』読了
アマチュア落語を題材にした小説『こっちへお入り』を読みました。
主人公は未婚アラサーの女性会社員で、友人のアマチュア落語発表会をきっかけに、自分もその世界にのめり込んでいく…という筋書きです。プロの落語家を主人公にした物語は多いのですが、アマチュアでどう話を展開させるのか興味があって読んでみました。
内容的には、「噺との出会い」というものが主軸で、「落語と出会って主人公がどう変わっていくか」はあまり描かれていません。それなりに困難な出来事が起こりますが、特に落語と深く絡み合うことも綺麗に解決することもなく淡々とストーリーは進みます。
対して一つ一つの噺に対する考察はかなり突っ込んだものになっていて、主人公が登場人物に共感する所、共感しない所などが詳細に述べられ、様々な人と語り合うことでその解釈が変化する様子も描かれています。こちらの方がメインなのですね。
「文七元結」で常に話題になる長兵衛さんの行動の是非なんかも正面から取り上げていてそこが面白かったです。
この小説に限らずですが、「落語が何をもたらしてくれるのか」というテーマは、かなり難しいと思います。言わばそういうことから自由でいられるジャンルですからね。あまり意義とか意味にこだわると、落語という芸能・娯楽の良さが失われてしまうのかもしれません。
ただ、落語に挑む人の姿はプロ・アマ問わずカッコいいので、これからも題材にした創作物にはふれていきたいなと思っております。