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落とし物を拾う_博論日記(2023/10/01)
2024年2月1日予定の口頭試問まで、あと120日。
そうだ、博士号授与までのタイムスケジュールが出たのだった。今回から予備審査出願までをカウントダウンしよう。
2023年12月4日の予備審査出願まで、あと63日。
雨あがりの、くもり。一時は叩きつけるように雨が降ったが、バイト後にはやんでいた。湿度は高めだがとても過ごしやすい。すっかり秋だ。バイト先のスーパーには続々と新米が入荷されてくる。少なくとも、新潟県産コシヒカリやコシイブキ、滋賀県産ミルキークイーン、島根県産仁田米は新米に切り替わった。まさに秋である。
一昨日の中秋の名月は、くっきりと美しかった。
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さて、雨もやんだことだし歩いて大学に向かおうか、とも思ったが、今日は頭の中で絶えずいろいろなことが浮かんだり消えたりしていて、ぼんやりしている。これは大学になるべく早く到着して、noteで泡たちを言語化するのがよさそうだと判断し、バスに乗った。
言語化と言っってみたものの、まだ浮かんでは消える泡の段階なので、ひとつのお話にまとめる自信がない。今日は話題を3つ書く形にする。
最近のお散歩写真がないので、今年2月に秋田犬を学び、かつ彼らとふれあいたくて秋田県大館市に旅した時の写真を挟むことにする。
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秋田駅改札前
■話題1
人と日常会話をしていて、動揺した時にこぼれてしまうお粗末な返答に関して。
発話に対して「この人は今、何を言おうとしているのだろうか(この発話のコンテクストは何か)」と考えることに集中していて、それが差別発言だったとしても、例えば沈黙したり、「えー、そうですかね」と弱くとも疑問を呈したり、「私はそう思いませんけど」と自分の意見を述べたりするということができないことがある。特に、動揺した場合、咄嗟にその人の論理を肯定するような返答をしてしまうことがある。
今週の具体例
Aさん「僕はパワハラ気質だから。実際そう言われたこともあるし。(今指導している)Bさんはしんどいと思いますよ。でも昭和と言われるかもしれないけど、僕からしたら甘いんだよね」
私 「ええー。お手柔らかに頼みますー(笑)」
思ったこと:
自分の発言に心底情けなさを感じた。Aさんがその発言をした直後に私の内部で発生していた動揺を後から言語化してみると、「このおじさん何言ってるんやろう、Bさん追いつめてやばいやろそれ」という具合になる。
でも、相手の考え方を読もうとするのに注力していた、かつ、仕事の合間の会話だったので「甘さとは何を意味するのですか」とか「指摘されたあとも方針を変えようとはならなかったのですか」など会話を広げる場面でもなかったため、会話を即刻終わらせることを選んでしまった。
私の応答は、何より自分を守るためのものだったと思う。私は「自分が我慢すればよいのだカード」を多用する傾向があるが、裏返すとそれは現状肯定で、自分以外の人にも我慢を強いることになりうる。つまりこのカードは、「自分さえよければカード」とも言える。
Aさん・Bさんのことを思えば、「それ、まずいです」と言えなくとも、言葉を濁すとか沈黙するとかすべきだったのではないだろうか。私は意思表示に至るまでが遅い、プラス、我が身がかわいいのだろう。
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そういえばこの5、6年、断続的にセクハラ・モラハラを受けているが、「自分が我慢すればよいのだカード」を切ることによって、問題に蓋をしてきた。むしろ、「ハラスメント」という言語化を避けるために鬱というモードに逃げ込み、暴食すること・寝込むことでやり過ごしてきたのかもしれない(私の鬱は過食・過眠症状という形であらわれることが多い)。加えて、どうすればその人がハラスメントモードに入らないかの考察が進んだため、回避率は高くなっている。
でも、このままその人を放置しておいたら、下の世代を苦しませることになりうる。やはり、私の「意味づけ」(自分を納得させるさせ方)は、私の内部で完結していることが多く、あまり社会とリンクしていないのではないか。
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「この日にアメを食べると風邪をひかない」という。
■話題2
・修士論文の総合考察の最後に、当時は検討しきれずに終わったアイディアを書き置いたことを思い出した。
今西錦司による自然学の、「種社会と種社会の棲み分けによる生物全体社会」というとらえかたは、人間と人間以外の生き物をおなじ地平においた、相互作用システムとしての、生物多様性の姿であるように思える。時間はかかるかもしれないが、生物多様性の保全という環境問題をそこまでの射程でもってとらえてみたい。それをフィールドワークから描いてみたい。
・今西錦司と言えば、日本の霊長類学・生態人類学的研究をスタートさせた人物である。
・昨年から勉強し始めたマルチスピーシーズ民族誌は、生態人類学と似ているように見えるが、バックボーンや方法が異なることに起因する違いが存在するという。
<バックボーン>
・マルチスピーシーズ民族誌:科学技術の人類学、フェミニスト科学技術論(重要な研究者:ダナ・ハラウェイなど)
・生態人類学:生業研究
<人間に対する見方>
・マルチスピーシーズ民族誌:人間はあくまでも「絡まりあい」の中で創発する存在であり、つまり行為主体性を持つ非人間を考える
・生態人類学:「欧米社会につよくみられる二分法的な発想」を拒否しながらも、基本的には人間による生態系利用を解明することが目的となっている ( 大石高典 2021「媒介者としてのハチ ー 人=ハチ関係からポリネーシ
ョンの人類学へ」『文化人類学』86(1):77)
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・私の共同研究者には生態人類学者も入っている。確実に影響を受けていると思う。
・ただ、修士の時に「種社会と種社会の棲み分けによる生物全体社会」というとらえかたを知ったとき、「行為主体性を持つ非人間を考える」ことをイメージしていた。生態人類学よりマルチスピーシーズ民族誌のアプローチの方が、やりたいことなのだろうか。
・先週読んでいた論考にもハラウェイが出てきた。ハラウェイは短い論考しか読んだことがない。1冊買ってみよう。
※ 近藤祉秋、吉田真理子 編 2021 『食う、食われる、食いあう マルチスピーシーズ民族誌の思考』青土社からヒントを得ている
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■話題3
・「ひとり学際研究」という言い方を本(※ )で見つけた。私の博論はそれに近い。
・「ひとり学際研究」をするにあたっては、「自分は何にフォーカスの当てようとしているのか」「それをどのスケールで見ようとしているのか」(1個体の人間(自分)と等身大の視点? 鳥の眼のような俯瞰的視点? 等身大よりミクロな視点?など)を、ひとつの学問分野で研究する場合よりシビアに把握している必要があるように思う。
・私は「何を」「どのスケールで」明らかにしようとしているのかを、いまいち把握しきれていないのではないか。異なるスケールのことを同列に並べて議論することにならないようにしなければ。
・空間的だけでなく時間的スケールも然りである。
※ 佐藤哲 2016 『フィールドサイエンティスト 地域環境学という発想』東京大学出版会
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*
いろいろ考えたが、つまるところ、今まで急いで歩こうとしたり、時間切れになったりしてぼろぼろと落としてきたもの(どこか心残りだったもの)を拾い直そうとしているのではないか。この落し物拾いが直接的に博論に役立つかはわからないが、きっと、序論(Ch.1)や総合考察(Ch.7)を書くための準備運動なのだと思う。手を動かし続けよう。
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<To Do>
・システマティック・レビュー:二次チェック中
・博論本文:
Ch.5→Ch.6→Ch.4:10月中
Ch.2→Ch.3→Ch.1:11月中
Ch.7及び修正:12月〜1月
1月23日学位論文審査請求(学位論文提出)※製本版提出は2月27日
・A 研究会 話題提供資料作成:博論要旨4,000字(10月8日)
・B 研究会 発表原稿作成:あと4割(10月14日)。
・公募:(10月18日書類必着)
・投稿論文:査読待ち
・分担書籍原稿:初校待ち