ドラマ「ブラッシュアップライフ」何度でも戻ってきてしまう
現在の記憶をもったまま、人生を最初からやりなおせたとしたら。
だれもが一度は考えたことがあると思う。バカリズムさん脚本のこのドラマの中で、主人公はなんと5回も人生をやりなおすことになる。
もちろんその都度ブラッシュアップされてはいくのだけれど、学力と職業以外は思いのほかなにも変わっていないようにも見える。
人生何周目だからといって、世界を変えるような大層なことを成し遂げるわけでもなく、身の回りで巻き起こる些細な事件(本人たちにとっては切実だけど)ばかりを毎度律儀に救っていく、そのスケールの小ささというか平凡加減が可笑しい。
作中の主人公世代ど真ん中のわたしは、シール交換のくだりとか、放課後の忍たま乱太郎とか爆走兄弟レッツ&ゴーとか(笑)、芸が細かいあるあるにいちいちテンションが上がってしまう。
絶妙に意地悪な視点とか、随所に差し込まれる独特のユーモア、この会話、絶対一回はしたことあるよな、と思える登場人物たちのリアルなやりとりは、もはや壮大なバカリズムコント。だけどその平穏な空気は第8話で一転、思わぬ展開にぞっとする。
ここからどうなるのかと思いきや、第1話から巧妙に散りばめられていた伏線が綺麗に回収されていくさまは圧巻でした。
人生5周分の経験値を駆使して、作中で唯一の大きな事件を無事解決した主人公は、結局もとの平凡な生活へ戻っていく。ああ、きっとそうなんだろうなあと、なんとなく腑に落ちる。
現在の記憶をもったまま、人生を最初からやりなおせたとしたら。
だれもが一度は考えたことがあると思う。そしたらきっと、大成功できるに違いないと。
もちろん経験値の高い分、いくらかはブラッシュアップされるのだろう。でも、何度やりなおしたとしても、何度でもわたしに戻ってきてしまう。そんな気もする。
今はまあとりあえず、この人生を懸命に生きてみよう。来世、希望の生命に生まれ変われることを願って。