あの夏は、胸のあたりで覚えている【読後感想】『TUGUMI』吉本ばなな
夏になれば、僕は彼女に会いたくなる。いくつになったって、思い出す。海の匂い、風。あの口の悪さ。美しい黒髪、透明に白い肌、華奢で大きな瞳。弱いくせに、ばかなことばかりする。忘れたくっても、忘れられない。彼女みたいな子、そうそういない。とかく強烈だった。つぐみは他の子とは全然違う。とにかく魅力的なんだ。僕は、あの夏つぐみに恋した。あの夏は、胸のあたりで覚えている。そうなんだよ、つぐみに会いたくなる季節がやってきた。再読した。だから書くことにした。
1989年
恋する本
純文学
90点
3時間半
さて、有名な小説なんだけど、それはたぶん僕より20上の世代にだろう。1989年の年間ベストセラーに選ばれた。吉本ばななの『TUGUMI』。
吉本ばななと言えば、デビュー作の『キッチン』だろ! という話も聞くが、僕は断然『TUGUMI』だね。
この記事では、あらすじも、引用も、ひとつもしない。あなたたちを信頼している。そんなのいらない。僕が固定記事として貼ってる『風の歌を聴け』に、毛色は近い。だからそんなことしなくていい。不要だよ。
だいたいだ、どんな話なの? とか、いるか? いらないよな。ただ一言、とても綺麗で、素敵な小説です。とだけ言う。
だってさ、つぐみが、とにかく、ほんとうに、魅力的なんだもん。
そして
この小説は、『TUGUMI』は、少し違う。僕はプレゼン記事を書くが、実はこの『TUGUMI』は、人を選ぶ。簡単に勧めたりしない。読んで欲しいと思える人にだけ紹介したい。芸能人が、ほんとうの行きつけの店を紹介しないことの感覚に近いかもww
もちろん、このnoteの世界は別で、信頼がある。たぶん一読はしているし、好きな人は多いと思う。だから発掘ではないし、僕もプレゼンをしてまで、布教、ほんと、読んでみて! 面白いから! みたいな類じゃない。
じゃあ、なんでって、
今さっき、久しぶりにつぐみに会ってきて、書きたくなった。というだけ。
若者言葉だけど、「エモい」。やっぱりグッときた。
この『TUGUMI』はね、大切な人に贈りたい小説というジャンルがあれば、間違いなくソレだね。
変なやつには読まれたくない。こんなに綺麗な小説なんだ。わがままなことを言えば、ほんとうは誰にも言いたくない、秘密にしておきたい。だけど、それも違う。それはエゴだ。僕だけのつぐみでいて欲しい。つぐみの魅力は、僕にしか分からないんだ! とか、痛い奴だろ。どこかで、僕が見張ってないと、つぐみが汚れちまうと思うんだ……そんな懸念が、
我ながらなんて痛い奴なんだ。でも思うよ、いつまでも、何度でも、あの夏のことを思い出す。思い出されるんだ。つぐみは、あまりに魅力的だった。
つぐみ、大好きだよ
おわり
そういえば、この『TUGUMI』は僕の大好きな10選でピックアップしたものだった、こっちにも貼り付けておこう。こちらもよかったら。
と、そろそろ真打『人間失格』を記事にしようかと考える。いやはや、緊張するな。でも、この夏には、また再読しよう。『こころ』でもいい。本屋で毎年プレミアムカバーとなって並ぶ、この2強は、いつも僕を誘う。
最後まで読んでくれてありがとう。すごく嬉しい。それではまた!