開発秘話を知る少女。【半笑いのポッキーゲーム】
「メーカーさんの気持ちを考えたことがありますか?」
その子は、ポッキーゲームが始まるや否や抗議を始めた。
「本当は1本丸ごとチョコで埋めつくしたかったでしょう。サクサクのビスケットの棒に、絶妙なバランスで塗られたチョコのハーモニー」
その子はポッキーの味を思い出し、自分だけ脳内で味わうように目を閉じて、「うーん」と唸った。
「それでも、食べやすさとの兼ね合いを考えて仕方なく、一部分にはチョコを塗らなかった…」
見たくはなかったが、その子の目には案の定、光るものがある。
「メーカーさんの思い、無駄にしないでください!」
キッと睨んでいるようなその視線から、誰もが目を逸らした、その時。
「なんでメーカーの気持ちがわかるのよ」
1人の女子が敵意むき出しに言った。それに対し、その子は言う。
「確かに、開発部は揉めに揉めたわ。
小枝のように、最後までチョコで覆ったっていいじゃないか!という「最後まで派」と、手を汚さずに食べられるという利点は大きいという主張の「一部残す派」の熾烈な争いがあった」
聞いていた者は皆、ごくりと唾を飲んだ。
「で?どうやって決着したのよ…」
その子はふっと息を漏らし俯いたが、
次の瞬間、半笑いで言い放った。
「もちろん、ポッキーゲームで決めたんだよ」
[完]
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今週のお題【半笑いの】×【ポッキーゲーム】で書かせていただきました。
字数オーバー💦