旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅③
旅行とはいえいつも通り五時のアラームで目覚めた。
なんだか体が浮腫んでいる。昨夜のラーメンだ。ラーメンは年間通して二、三回しか食べない。体が驚いている。
すぐに大浴場に行って朝風呂で体をほぐす。白浜温泉は少し塩辛い。
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朝食は食堂でフレンチを出してくれるらしい。朝からフレンチて。朝でも昼でも夜でも、フレンチなんていつ食べたんだろう。たしか誰かの結婚式が最後。フレンチて。
ひとりなのは私だけだったし、正直いうと食べ方が「?」なものもあったけど、しっかりドヤ顔で完食した。
部屋に戻る前に、隣の部屋に宿泊しているカップルが食事をしている横を通り過ぎた。ついでに食堂をでたあと自分の部屋も通り過ぎてしまった。二回目。方向音痴だから仕方ない。
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チェックアウトの時間を待たずに身支度をして宿に別れを告げる。
今回の宿はすっごく良かったけど……。
うーん。
天気は雨予報でも、どうにかもってくれている。今日も二箇所は回りたいところ。
まずは雨が降らないうちに三段壁からの絶景を見に行く。
景色を眺めたあとは三段壁洞窟へ。地中36メートルをエレベーターで降りると、出迎えたスタッフが早速記念写真を撮ってくれた。もちろん有料で、帰りに買うパターンだ。ひとり客だからという訳ではなく、この地ならではのサービスで、パンダのぬいぐるみと一緒に撮ってくれる。
早い人は五分で見終わってしまうという洞窟内を、絶対に五分で見終わらないようにじっくり見て回る。
順路を進み、帰りのエレベーターの前に着くと、入口で撮られた写真が飾られ、人が集まっていた。
誰の目にもつくところに晒されているので、撮られた本人として一応確認しに行った。まんまと買ってしまった。
半笑いで「一枚ください」と言った。
「〝思い出〟込みで1500円です」と言われた。
思い出込みでいくら、という計算であれば、たった一枚の写真に1500円払うことが安く感じるとでも言うのか。
言わされているんだろうけど、みんなで使い回すほどいい台詞でもないと思う。(突然の辛口)
つづく