ハシビロコウに恋をした⑭【最終話】
「なーんてね!」
だはははは。
飼育小屋を掃除している間、空想に耽っていた私は、我ながら陳腐なクライマックスに恥ずかしくなり吹き出してしまった。
私が担当するハシビロコウの『ヒロユキ』は、今日も神秘的な姿でそこにいる。
餌の入ったバケツを置くと、首を上下にしながら近づいてきた。見慣れた者にだけ見せる『お辞儀』。更に、カタカタと鳴らすクチバシの音。これらは私に対して親愛の情を示してくれている。
「ヒロユキ、おはよー」
ヒロユキは魚を丸飲みにしている最中だ。
「あなたを見てるとさー、どうも想像が広がっちゃうのよね」
チラとこちらを見たヒロユキの下三白眼は私をドキッとさせた。
ハシビロコウっておもしろいよなー。
私はこの子のことが好きだ。
まるで『恋』をしてるみたいに。
【完】