6月
九時三〇分
今日の朝は、自然に目覚めた。
曇天と雨が続くこの時期では珍しい
眩しい朝日を浴びたおかげだろうか。
久しぶりの快晴。しかも土曜日。
気持ちも晴れ晴れとする所だけど
今日のわたしの心は、生憎 曇天です。
二度寝をしようかと思ったけど、
こんな気分じゃおちおち寝られない。
最低限の身だしなみを整え
近くの大きい公園へ向かった。
池の近くのベンチに座る
空いているのは、日向のベンチばかり
『あっつ…』
急な夏日の気温に、体が追いつかない…
外出たの 失敗かも。
こんな暑い日差しの中
私は日傘にもならない普通の傘を握りしめて歩いている。
一昨日雑貨屋で見つけた
青くて可愛い、海月みたいなお気に入りの傘。
…そして今日の、わたしの心を曇天にした原因だ
—
昨日の帰り道、あかねと帰っていた時のこと。
『え〜、なにその傘(笑)』
その一言が、まるでりんごを切るナイフのように
やわらかい部分にぐさりと刺さる
バカにする意味でその言葉を放ったとも限らないのに、
とにかく無性に腹が立ったんだ。
呼び止めるあかねの声も聞かずに
わたしはその場を立ち去った。
—
いつもなら気にならない
ふつうのやり取りだった。
だけど昨日のわたしには
それができなかった。
ごめんね、海月ちゃん。
おまえは何も悪くないのに…
ジリジリと日差しが肌を焼く中、
そろそろ帰ろうと立ち上がった時
とても心地よい風が吹いた。
じんわりかいた汗を吹き飛ばす、爽やかな風。
思わず傘を広げてみる
青くて大きい海月の影が、緑の中に浮き上がった。
うん、やっぱり可愛い。
そっか。
昨日あかねに笑われた時、わたし恥ずかしかったんだ。
この傘を持つことに、少しだけ恥を持っていたから。
理由が分かると 心に少し晴れ間が差す
─月曜日、あかねに謝らなきゃな。
そんなことを思いながら、傘をくるくると回していると
あかねからLINEが届く。
…携帯と傘を閉じ ベンチを後にした時
わたしの心は今の空とおんなじになっていた。
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