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静寂な公衆浴場で思索に耽る心理学者【研究者日記】
故郷である北海道函館市に帰省するたびに訪れる場所が谷地頭温泉である。
夜景で有名な函館山の麓にある公衆浴場だ。
ちなみに函館山というのは元々は島だったらしい。その島と北海道の間に堆積し、土地となったのが函館の街のようだ。その甲斐があり、函館は不思議な形をしている。
函館山の麓に湧き出る温泉は最高の泉質であり、サウナ好きには水風呂の質が最高なのである。山の麓という雰囲気も相まって、地元住民からも観光客からも愛される公衆浴場である。
いつも私が行く時には温泉やサウナを楽しむ人で賑わっているのだが、平日の日中はなかなかに静かな場所である。
水の流れる音以外は何も聞こえない空間、高い天井に空気が反響し、なんとも言い難い静寂を作り出している。
静かな場所では思索が進む。
普段はマルチディスプレイの部屋、スマートフォンの通知、そして数多くのタスクをこなす日々、その対象として、なにもない空間はある意味新しい刺激にもなる。
日常は刺激に溢れすぎている。私はそういった刺激に包まれているのは嫌いではないし、ビレッジバンガードのような雑貨に囲まれた場所はむしろ好きである。
一方、日々刺激に溢れていると、じっくりと思索する時間は失われてしまう。慌ただしさにかまけて、本当に大切なことを忘れてしまうことも多い。
人生、引き算も必要だ。
フィンランドのヘルシンキ駅に降り立ったときの、街ながらも静寂に包まれた空気、カフェカーシャルビィでスモークサウナに入ったあとの静寂に包まれた森の中が忘れられない。
静かな場所では思索が進む。自分自身の思考に注目を向ける余白が増えるからだ。
引き算をして余白を作る。人生について考えるには、あえて刺激を減らすということも大切なのかもしれない。
谷地頭温泉のあつ湯に浸かりながら、もう少し入りたいなと思いながら、音を立てずに湯から出ることとした。
静寂の中で思索を深める時間―それこそが、忙しい日常における私の贅沢なのかもしれない。
それでは素敵な日曜日をお過ごしください。