何の取り柄もない専業主婦が手持ちのカードで戦っていく話
年度末の2~3月は、学生さんからのインタビューや取材が増える月。
特に私のような専業主婦から起業した話や、22で出産して仕事と家事育児をどう両立するかというテーマはとても関心があるようです。
お話をさせていただくのは大学生の女の子が多く、まだまだ自分のキャリアも、結婚も子育ても未知の世界。
何にでもなれるし、何でも選べる。
自分の未来を好きにクリエイトできる、キラキラとした瞳が少し羨ましくもあります。
女子大生のキャリアの悩みで多いもの
「キャリアを積んでいきたいけれど、仕事と子育てが両立できる気がしない!」
「子どもは欲しいけど、仕事をあきらめないといけないと思うと悩んでしまいます」
そんな声はとても多いです。
そんなお話に対して私は
「子どもは授かりものだから、いくら自分の人生設計をたてたところでうまくいくとは限らないこと」
「結婚しても、幸せになるとは限らないこと(転勤、介護、離婚、親の問題、子どもの問題、いろいろあるよね生きていたら)」
リスクを考えるのはとてもわかるけど、悩んだって仕方がないことは多々あり、ある程度人生設計を見誤っても歩き続けていられる柔軟性を持つことが大事だと説明します。
キラキラな瞳の20代前半はとっくにすぎて、そろそろ人生折り返しの40代が近づくと、後ろを振り返れば自分が一生懸命積み上げてきたものが道を作り、でこぼこだけど頑張ってきた証がいっぱい詰まっている。
今の仕事を目指した理由
ある時、こんなことを聞かれました。
「青木さんはどうして今の道に進もうと決めたのですか?」
その答えを頭の中で探して、でも真っ先に思い浮かんだのは
「その道にしか進めなかったから」
という言葉でした。
それくらい、当時の私は何の取り柄もない専業主婦だったから。
今の仕事は大好き。出会えてよかったと思うし、他の仕事を探す気はなく、ずっと関わっていたいと思う。
でも、小さい頃からの夢だったわけじゃない。
というか、夢なんてなかった。
今の自分を20年前の自分が見たらとてもびっくりするくらいに、自分の人生設計にはなかったであろう生き方をしています。
進める道をたぐり寄せて自分の出来る事を使って何とか歩いて、気づいたらここに来ていた…という感覚。
私の平凡なキャリア
勉強が嫌いで高校は進学校に進みたくなくて、動物が好きだからと安易に農業高校の畜産科に推薦で入り、大学に行く意味を見出せなくて可愛いものが好きだからという理由で専門学校に入ってトリマーの技術を身に着け、ペットショップに就職。
会社員時代はたったの2年。
就職先は以前から憧れてた念願の職場だったけど、トリマーの仕事自体は向いているかと言えば向いていなかった。
お客さんとお話することは好きだったけど技術が追い付かなくて、結婚して妊娠したのを機に退職し、お母さんになりました。
母親という肩書
母親という肩書きは、なんの取り柄のない私でも役割を与えてもらった気がして、家事も育児も会社員時代よりは幾分向いていて、好きでした。
そこから、専業主婦を1年やって家事と育児だけの毎日に飽き、子育て経験をもとにフリーランスで乳児教室の講師を6年。
自分の何もなさが嫌になって、独学で保育士の資格を取り、いちおう社会からの肩書きはGETして。第二子を出産して、趣味が高じていまの事業を興し、もうすぐ10年目です。
何か明確な目標や夢があったわけでもなく、半ば行き当たりばったりにその時のやりたいことや自分でもできそうなことをやっていたら、いつの間にかそれが自分の手持ちのカードになっていました。
手持ちのカードの話
若い頃の私には何もないと思っていたけど、子育て経験や会社員時代に培った人とのつながりや、資格、今の仕事の経験が私のカードとして手元にある。
カードは増えていくし、なくなることはない。
夢や目標がなかったから、逆にその時その時のベストを尽くせたのかもしれません。進んでいるすべてが私の道で、得た経験はすべて私のものだから。
それをどう使うかも、自分で選べる。
子育ても、結婚も、選んだ人もいるし選ばなかった人もいる。
選べなかった人もいるかもしれない。
人生には選べるものと選べないものがあるのです。
少し前に、人生は意思決定の連続で、自分が選んだもので作っていくと話をしていたことがありました。
ほんの数年前、自分の足で選んだ道を進んでいると思っていたころ。
もちろん、今もその感覚は変わらないのですが、もう少し付け足すとしたら「それが自分で選んだ道じゃなくても、自分次第で正解にすることはできる」ということでしょうか。
自分で選べる選択肢をたくさん増やしていくと同時に、選んできた選択肢をしっかり自分の糧にして人生を乗り切る。
人生をゲームと例えるなら、手持ちのカードを少しずつ増やして、磨いて、いつ来るかわからないチャンスに備えること。
専業主婦の経験も、子育ての経験も、今の私になくてはならないカードです。
自分のやりたいことが向いていなかったら、できることで働いてもいい。
好きなことと向いていること、仕事になることはイコールにならないこともある。だから、好きなことを仕事にしなくてもいいことだってある。
私だって、最初から子どもが好きなわけじゃなかった。
子育ても、向いているとは思っていない。
でも、好きなほうだと思う。
今の仕事は好きだし天職だと思っているけど、それ以外にもやりたいことは実はあります。
だから、今のフィールドから少しずつまた手持ちのカードを増やす準備をしています。それは、一生続く作業になるでしょう。
居場所を複数つくること
今の時代は「好きなことで働く」のほかに「好きなことをたくさん持つ」も大事だと思っています。
数年前に、仕事と家の往復で、私を見失っていた時、母でもなく仕事の自分でもない場所を見つけて、そのサードプレイスがあったから自分が本当は何をしたいのか見つめなおす時間ができたことがありました。
その時は、少なからずとも自分のやっていることと気持ちに違和感があったのだと思うし、自分が自分じゃなくなっていく感覚がありました。
それを修正するためにサードプレイスを作りました。
今は、コロナの影響もありますがその場所がなくても仕事と家庭の往復で満ち足りている状態なのでストレスはないけど、いつまたそうなるかわからない。
その時のために、次のサードプレイスを探す心づもりは持っていようと思います。
思うようにいかない人生だったとしても
自分の決めた道があり、夢があり、目標があって、進むことはとても尊いことです。
でも、自分の思うような道ではなかったとしても、落ち込むことはありません。
いつどんな風にその経験が役に立つかは誰にもわからないからです。
そして、自分が決めた道じゃなくても、やってみたら意外と楽しかった、向いていた、なんてこともあるのです(逆もありますが)
だから、なんでも楽しめる、面白がれる感性を磨くことはスキルとして身に着けておきたい。
やりたいことは、いつでも変わるし変えることができる。
その時に、一歩踏み出せるかどうかはとても大事なのだと思います。