ハーゲンダッツ2個食べていいか問題。
冷凍庫にハーゲンダッツのアイスが2つある。
最近CMでやっている新食感のやつ。
カリトロ的なやつ。
それが冷凍庫に2つある。
厳密には、あった。
同居人が、彼と僕に1つずつ買ってきたのだ。
そして言わずもがな、僕はすでに1つ食べた。
とてもおいしかった。表面の固いチョコレートを掘削したあとに訪れる柔らかいチョコレート、そしてその下の抹茶アイス。こんなにもCM通りの商品は久しぶりだった。
「もう1つ、食べたいな・・・」
しかし、もう1つは同居人のものである。
彼は僕に「絶対に食うな」と釘を刺していた。それくらい楽しみにしているのと同時に、僕は信用されていない。前科の数は両手では数えきれないから。
同居人は毎日出勤する。
朝早くに家を出る。
僕はリモートだからずっと家にいる。
つまり冷凍庫は支配下にある。
「もう1つ、食べようかな・・・」
十分可能である。
なぜなら同居人はいないから。
しかし同居人にも食べてほしい。
あの感動をシェアしたい。
しかしだ。
「もう1つ食べたい・・・」
そこで僕には2つの選択肢があることに気がついた。
先に食べて買いに行くか、買ってから食べるか。
後者は安全策で、前者はやや力技感がある。
前者の場合、売り切れていたらおしまいだから。
僕は悩む。
圧倒的に後者を選ぶべきなのだが、いかんせん、めんどくさい。
どっちにしろ買いに行くことは決定しているのであっても、義務感がないとめんどくさい。
それなら、先に食べてしまって、「買いに行かないとやばい」状況を作った方が外に出るハードルは下がる。いっそそうしてしまおうか。
いやしかし、もしどこにもなかったら。
売り切れ状態だったら。ゲームオーバーだ。
そもそも同居人は普段僕に買ってこない。
ということは、よほど品薄だったとも考えられる。
いや、しかしだ。
「もう1つ、食べたい・・・」
しかし、
「外に出るの、だるい」
つまり、
「先に食べちゃおうか・・・」
しかし、
「売り切れてたら・・・」
悩む。答えは明白なのに、悩む。こんなの学校で習っていない。
明らかに、答えは「先に買いに行く」そして「なかったら食べない」なのだ。
しかし、
「もう1つ、食べたい・・・」
食欲が邪魔をする。
この明白な、単純明快な答えを曇らせる。厄介。
一旦落ち着こうと、僕は冷凍庫に向かった。
やはり、冷凍庫には1つしかない。
その代わりにゴミ箱にアイスのゴミがある。
冷凍庫のソレは食べられるのを今か今かと待ち望んでいる顔をしている。とてもイキイキしているフォルムで僕を見つめる。
気がついたら食べていた。
これで僕の選択肢は1つになった。