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てんてんと、しんしんと雪かき、漁船、時々PC

雪国に2ヶ月限定で越してきた。

温暖で、穏やかな気候の港町とは打って変わって、ひたすら寒い。半端じゃない。身長の3倍くらい雪が積もるし、降っても降ってもまだ降り積もる。どかしてもどかしても労働を嘲笑うかのように、持ち場には雪がどっさりと。

やれやれ、ため息をつく。これじゃあ前の事務のバイトと同じじゃないか。こなしてもこなしてもあのハゲは僕の机にどっさり書類を載せてきた。「これ明日の朝までに宜しく」と。あのニヤけ面を一度でいいから書類で窒息させてみたかったが僕にはきちんと理性やほんのわずかな社会性が備わっているのでグッと堪えてその代わり、退職する日に「やられたことリスト」を机の裏に貼り付けた。

それに比べればまだマシであるが、いかんせん寒い。寒いし、雪は重いし(誰だパスダースノーは軽いから余裕とか言ったやつ)、汗をかくと一時的にはポカポカするがすぐに冷えて最悪な気分になる。

冬季限定の住み込みバイトで、とある雪国県の旅館で雪かき、荷運び、その他体力仕事をしている。寮費が諸々無料なのでかなりお得だった。食事も1食ついているし、昼には弁当がもらえ、深夜の大浴場の掃除前には風呂にも入れてくれる。もちろんタダで。こんな”当たり”はいつぶりだろう。

先行き不透明な現代で悩み、考え、たどり着いた生き方が季節ごとに職を変えることだった。

冬は旅館やスキー場で住み込みバイト。ここで貯金をしつつ、それ以外では農場や漁船で働く。あるいは知人がくれる単発の仕事をやったりする。27歳くらいまでは主に静岡の、例ののほほんとした海沿いの街でホームページを作ったり記事を書いて慎ましく暮らしていた。しかし平和な日常はそう長く続かず、2029年のいわゆる「IT・AI革命」で僕の仕事は激減し今に至る。知人の会社は今なお健在で時々仕事をくれる。パソコン2台と最低限の衣服や非常食、大型のスーツケースに収まる所持品。ガラガラと車輪を回してあちこち住み込み、働き、時々パソコンで仕事をして、バイトをして、そのひぐらし感覚で生きている。

今、34歳だけど、まだ一応肉体労働はいける。鍛えられた肉体のせいか、若くみられるので基本的に採用してもらえるし、都市部で過ごした学生時代にやっていた深夜の肉体労働にはおじいちゃんも割といたので仕事はなんだかんだどこにでもあるのだと知っている。

それにいろんなところに住むのは結構楽しい。きったないところに住むほど、僕はどこにでも住めるようになった。思えば20歳の倉庫には感謝である。

雪かきのバイトももうすぐ終わる。そろそろ次の仕事を探そう。できれば住み込みがいいけど、そう見つかるものではない。マンスリーマンショ、高いけど最悪それもありだし、満喫時々路上でもいい。生きていれば勝ちなのだ。

生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。