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僕がカットモデルをする理由

よくカットモデルをしています。「モデル」というとオシャレで聞こえはいいですが、実際はただの「練習台」で、美容院や理容室でデビュー前や経験の浅い美容師さんや理容師さん、アシスタントさんが多少失敗をしても良い実験台として、無料で散髪していただいています。

髪型にこだわりがなく、節約したい僕と、人形ではない生身の人間の髪の毛で練習をして研鑽を積みたい新人さんが予約アプリでマッチングをするのですが、サクサク予約も取れて、とても有り難く利用をさせていただいています。

カットモデルを募集されているお店は普段は行けないような高級店も多く、新人の方とはいえ、実際に施術中に耳を切り落とされるなどの失敗はされたことはありませんし、皆さん丁寧にカットをしてくださいます。そして多くの場合は、先輩の美容師さんが後輩にアドバイスをしながら手直ししてくれるので、仕上がりも大満足です。

ただ、長年やっていると気まずい体験をする事もあります。たまにある「気まずい」は、先輩美容師さんがチェックの際に、僕を切ってくれた新人さんをダメ出しする時です。

「この方は、ここの部分の毛量が薄いからこういう風に切った方が良い」
とか
「こういうクセの強い髪の場合は、こうする」等、
基本的にカットモデルに人権は無いので、コンプレックスをほじくり返すような事を僕という当事者のいる前でザクザク指摘されることもあります。問題はないのですが、少し心がズキズキします。ただ、稀にある新人さんがガチで怒られて、ダメ出しを食らった場面に遭遇してしまった時がかなり辛いです。

「ここが変だよ!前も言ったよね!」とか僕を混じえない形で僕の頭を非難するお説教のパターンはまだ良い方で
「なんでこんな左右のバランスが悪いの?お兄さんはどう思います!?」
と僕に飛び火して感想を求められるパターンは地獄以外の何物でもありません。僕は正直、髪型に無頓着なのでよっぽど変でない限り、どうも思わないですし、そもそもよくわかりません。無料で切っていただいているので、極力新人さんの肩を持ちたいのですが、尚更先輩美容師さんを不快にさせてしまうと逆効果ですし、完全に板挟みです。なので、基本的に「あ、あまり気にならなかったんですが、言われてみるとそうかもしれません!」というようにバカみたいに爽やかに、そしてソフトに「先輩の意見に少しだけ同調する」ようにしているのですが、これが正解なのかはわかりません…
ただ、そういう場面に出くわすのは本当に稀で、基本的にはとても居心地が良いです。

そもそも、僕がカットモデルをする理由として、前述の節約という理由も大きいのですが、美容院での会話が苦手ということもあります。コミュ障で周りを気にしがちな僕は、希望の髪型を伝える事も上手く言語化が出来ず、かといって、ヘアカタログから好みの髪型を選ぶというのも恥ずかしくて躊躇ってしまいます。また、施術中に話しかけていただく場合は「気を遣って世間話をしてくれているな」とか「何か面白い話をしなければ!」と疲れてしまったり、逆に話しかけられない場合は「僕が威圧的な態度をとっていないだろうか」や「沈黙が気まずそうだな」と考えてしまい、やっぱり疲れてしまっていました。
事前のアンケートシート等で施術中の過ごし方を尋ねられる美容院もありますが「会話をしながら」を選ぶと、めちゃくちゃ話したい奴だと思われるのも嫌で、かと言って「静かに過ごしたい」を選ぶと感じが悪い高飛車な客と思われるのではないか、と考えてしまいます。
「お金を払って気を遣う」という、極めて不健全なことを永らく続けていましたが、カットモデルだと「お客さん」という立場ではなくなり、対等な関係なので、美容師さんの余計な気遣いやヨイショもなく、個人的にはリラックスでき、良い時間が過ごせます。
 周りが自然な状態で別の美容師さんが雑談をしていたり、閉店作業の掃除をしながら髪を切ってもらう方が、自分の性に合っているのかもしれません。

 意外かと思いますが、美容院が苦手な方こそ、是非カットモデルをやってみてください。お財布にも優しいし、とてもおすすめです。

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