知らない人にお金を貸しそうにならなかった話
最近は、残業も飲み会もなく、仕事終わりは真っ直ぐ家に帰る事がほとんどだったのですが、久々に打ち合わせで、帰りが遅くなり、駅前の定食屋さんで、ご飯を食べて帰ることがありました。
定食屋さんのご飯を堪能して、店から出て、しばらく歩いていると、後ろから気配を感じます。
「なんか…ついてきてる人がいる!…気がする…」
30代半ばの中肉中背の僕にストーカー…!?
人生初のモテ期かもしれない!…と、多少の緊張感と好奇心を抱きながら、営業終了した不動産屋さんの前で立ち止まり、購入できるハズもない高級タワーマンション売出の掲示を眺めていると、僕によく似た背格好で同世代くらいの男性が話しかけてきました。
やはり気配は間違えではなかった…自分の勘の鋭さに満足しながら、
「でも、思っていたのと違う…」
と落胆しました。
この男性の僕への興味がなんなのか…という新たに別の疑問と緊張感が発生しました。
「すみません…妻に家から追い出されてしまい、給料日になったらお金を取りに来いと言われていまして…。給料日には返せますので、お金を貸してもらえますか…?」
なるほど…。
「大変ですね。でもお金を貸すのは無理です。頑張って下さい」
幼い頃に、母親から言い聞かされた、
「知らない人にはついていっちゃいけません」
の応用版か…などと思いながらも、
お金の切れ目が縁の切れ目だと思っている僕は、近しい友人や親戚であってもお金は貸さないポリシーなので今回のケースも一蹴し、その場を後にしたのですが、
あの男性が何者だったのか、今とても興味があります。
まず、一番可能性が高いと思われるのは、「ただの詐欺師」だということ。
キャッシュレス決済が主流の現在、家から締め出されてしまったからといって、生きていくに困るほど、現金が必要でしょうか?スマホがあれば、現金がなくとも問題なく生活は送れる気もします。話自体が作り話という可能性が高い気がします。
二つ目は「本当に家から追い出されて無一文」の可能性です。「給料日になったら妻にお金を取りに来いといわれている」彼はこう言いました。つまり、彼のキャッシュカードにはお金が一切入っていないか、キャッシュカードを持たされていない、という可能性もあります。
「給料日になったら」ということは彼は定職にはついていて、家を追い出されながらも仕事は普通にしている可能性が高いと思われます。こういったケースで、想像されることは使い込みや浪費が奥さんにバレてしまい、家を追われてしまったと考えるのが、妥当でしょう。使い込みの理由も、親戚や同僚を頼らず、見ず知らずの私に声をかけて助けを求めることから、後ろ暗く、近しい人には相談できないことなのでしょう。そう考えると、より一層貸したお金を回収することは現実的ではありません。
そもそも、彼がすべきことは「赤の他人にお金を借りるために頑張る」のではなく「奥さんに許してもらえるように頑張る」ことが大切かつ解決の糸口なのです。人間、追い込まれると頑張り方も間違ってしまうのだな、と学びました。
三つ目、これは自宅に帰って「こんなことがあったんだ」と妻に話したところ、妻は世にも恐ろしい仮説を唱えました。
「それは異国の諜報機関の人間でお金だけでなく、情報も搾取するつもりだったんじゃないか」
最初は、小さい要求から始まり、年単位で時間をかけて仲良くなって断れなくなってから次第に大きな要求をしていく…
30代半ばのずんぐりむっくり、人が良さそうにみえて、騙されやすそうな一般市民の私が異国のスパイにとってどんな有益な情報を持っているのか甚だ疑問ではありますが、可能性は0ではありません。
ここまで妻の想像力が働くのもNetflixをはじめとした、グローバルな動画配信サービスの発展の賜物で、様々なサスペンスやミステリー、ホラー作品を手軽に視聴でき、作品から犯罪の事例を積み重ねて学ぶことができる、真のグローバル社会と言えるのかもしれません。
異国の諜報機関の人間にしては、尾行が下手すぎますし、ただの詐欺師という、しょーもない真相なのだと思うのですが、確認する術もなく、妻のいうように全く思いもよらない目的だったのかもしれません…。
いづれにせよ、関わったらデメリットしかなさそうなことは目に見えているのに、自分の好奇心で話を聞いて、こんな文章を書いている僕はとても暇なんだな、と憂いています。
一方で、人の善意を利用する悪い奴は意外と世の中にたくさんいるので、注意しなければな、と思いました。
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