トルコのスタジアムで助けてもらった話
10年ほど前、1人でイスタンブールを
旅行した時の話です。
イスタンブールの観光地、
ブルーモスクやボスポラス海峡、
スパイスバザール…
アジアとヨーロッパの交わる魅惑の街の
主要な場所を観光し終えた後、
せっかくトルコに来たのだから、
ふとトルコリーグが見たいと思い立ち、
ネットでイスタンブールでの試合を探しました。
しかし、よく知る有名クラブの
ガラタサライとフェネルバフチェは、
アウェイ遠征や試合なしの週で、
当時名前を聞いたことがあるくらいだった
ベシクタシュの試合のみがイスタンブールで
おこなわれる日程でした。
しかもホームスタジアムが改修中のため、
イスタンブール郊外のスタジアムで
試合が開催されることを知りました。
スタジアムが遠そうなことと、
チケットの買い方がわからなかったことで、
少し躊躇しましたが、
今後ヨーロッパでサッカーを
生で観戦できることも無いと思い、
チケットもないまま、
とりあえず会場に流しのタクシーを
捕まえて向かいました。
屈強で陽気なタクシードライバーは
スタジアムの場所を知らず、
会場も遠くてかなりの時間、
タクシーに揺られ、やっと到着して代金を
支払ったと思ったら、
「お金が足りないぞ!!」
と渡したお札を隠されて…
口論になり、疲労困憊。
(泣きそうな顔で抗議していたと思います…。
追加料金は意地でも払わなかった。)
心配していた試合チケットは
タクシーを降りてすぐに怪しげな男性が
近づいてきて、
日本円でたしか2,000円くらいで
売ってくれました。
(多分、定価よりは全然高い)
スタジアムの外は、厳重な警備。
チケットも記念に取っておきたいと
思っていたのに、愛想のないもぎりのスタッフは
ビリビリにして返してきました…
おもてなしとはほど遠く、
スタジアムの中も独特なチャントが流れて、
荒々しい男性たちが上半身裸で
叫びまくっており、心細さと疲労で
「マジで来なければよかったな」
と後悔しながらも、
これがヨーロッパのスタジアムか、
なんて考えながら比較的安全そうなエリアに
腰掛けました。
もちろん日本人はおろかアジア系すらおらず…
周りからは少し好奇の目で見られているような
笑われているような気もして、
アウェイ感をひしひしと感じていましたが、
そんな私に近くの席に座ったご家族が
声をかけてくれました。
国籍を尋ねられ、日本と答えると、
日本企業の関連会社で働いており、
日本語は話せないけど日本に興味があること、
ガラタサライにいた稲本潤一は素晴らしい選手だったこと、
でも自分は家族も含めて熱狂的なベシクタシュのサポーターであること…
私は英語がとても苦手なので、
正直話していることの半分くらいしか
理解できませんでしたが、必死で聴いて、
トルコのサッカー選手は
ヌリシャヒンやイルハンを知っていること、
自分の応援するチームは
日本の2部リーグの松本山雅FCであること、
ここまで来るのに苦労した話などをして、
それをよく聞いてくれました。
(日本のチームは浦和レッズを知っていました。
さすが世界のレッズ…)
そこからあくまで中立的に観ていた試合も
そのご家族と楽しくベシクタシュを応援し、
2-0でベシクタシュリードで
後半40分を迎えました。
その時、またご主人が話しかけてくれました。
「僕たち家族は今から混雑する前に帰るけど、もし、試合が終わる前に帰るのが嫌じゃないなら、車でホテルの近くまで送ろうか?」
…帰りのタクシーも拾えるかどうか…
またトラブルになることもあるかもしれない…
と不安と憂鬱な気持ちだったので、
本当にありがたい提案でした。
郊外だからタクシーの数も少ないことを教えてくれたので、お言葉に甘えることにしました。
車の中では、3歳の双子の子どもたちが、
ベシクタシュのチャントを
かわいくレクチャーしてくれて、
車の中は大合唱。
私はベシクタシュのチャントを歌える
数少ない日本人にレベルアップし、
そのお礼に何かできることはないか必死に考え、財布の中の手持ちのレシートを
慌てて正方形に切り取って、
不恰好な折り鶴をプレゼントしました。
(そんな鶴でもすごく喜んで、奪い合うように遊んでくれたのが嬉しかったです。)
そして、無事にホテルの近くまで私を送り届けてくれて、わざわざ車から降りて見送ってくれました。
日本では様々なスタジアムで、
ボランティアの方が
丁寧に案内や誘導をしてくれたり、
困っていると助けてくれます。
私の応援する松本山雅FCも
ボランティアの方やスタッフの方々が
過ごしやすいスタジアムづくりを
してくださいます。
トルコのスタジアムは
日本とは全く違っていて、荒々しく、
血の気の多いまさに闘いの場でした。
しかし、サッカーへの愛や、情熱、
人の熱気は日本と同様に感じることができ、
なにより、出会ったご家族が親切にしてくれた
トルコ流の「おもてなし」は、
とても嬉しい体験になりました。
久々にベシクタシュの名前を
聞く機会があったことで、
自分にとっての大切なトルコでのエピソード
を思い出し、長々と書いてしまいました。
あの双子の子どもたちも、もう中学生くらいになっているでしょうか。
連絡先も聞かずに別れてしまい、もう会えることはないですが、もし会えたら改めてお礼が言いたいなと今更ながら思います。
またいつか、トルコを訪れて、ベシクタシュの熱い熱いサッカーを観戦したい、そんな日が来ることを願っています。
そして!Jリーグの2022シーズンが開幕しました!今年は昨年より多くスタジアムに足を運び、サッカー、そしてスタジアムを楽しみたいと思います!
そういえば、あのご家族は子ども達は3歳からスタジアムに連れられて、ベシクタシュサポーターの英才教育を受けていました。
あれから早10年で私も子どもが2人…(双子ではありませんが…!)
もしも、アルウィンで気の弱そうで不安そうな外国人がいたら家族ぐるみでサポートし、全力のおもてなしをしたいと思っています。あの時、私がそうしてもらったように…。
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