ナナニイF-4ファントムのデカールあれこれ
ファインモールド製の1/72アメリカ空軍F-4DファントムⅡを製作している。
このキットのデカール(スライドマーク)の功罪というか長短についてまとめておきたい。
コーションマークをつなぐニス
まず目につくのが、細かいコーションマーク(注意書き)がニス(透明部分)で複数つながっていることである。
小さなマークを一つずつ貼るよりも、時短になり位置決めもしやすい。初心者にとってはありがたい配慮である。
一方で、ニス部分が多くなり、テカリやキット表面との段差がけっこう不自然に目立ってしまう。いかにもつながってますというか……。
シルバリングのリスクが増したり、上から(クリヤーがけ後に)ウォッシングなどの汚しを入れようものなら、ニスの段差にスミが溜まってしまう。雑誌作例でもこういうのを見かける。
これは1/72スケールであるとけっこう致命的に思える時がある。
私の場合、水につける前にニス部分を切る。結局、従来通り一つずつ貼ることになるが、見栄えが違う。密着させるのが前提だが、保護を兼ねてクリヤーを吹けば、ニスのテカリはけっこう抑えられる。
(研ぎ出しでも消えるが、カーモデルと異なり、飛行機模型の研ぎ出しはそこまで常套手段ではないだろう)
あるいは軟化剤を使って綿棒で押しつけると、少しはデカールの段差を減らすことができる。(詳細は次回以降書く)
そもそも同社のキットのデカールは発売から間もないもの、新製品が多いので、劣化しておらず、水ですぐに台紙から剝がれてくれて、効率よく貼ることができる。
私は3〜5個、まとめて水に浸して貼っていく。小さなコーションマークが多いファントムだが、そこまで苦ではない。というかこの工程が好き。
それでも良いと思うわけ
こうして功罪を書いてもやはり功が余りあるのが、同社のデカールである。
決定的なのは、1/72スケールでは、アメリカ空軍のファントムのキットは、もはやファインモールド製しか、店頭在庫として流通していないことである。ハセガワの再版を期待したいが、米空軍機はしばらくご無沙汰。なので、私は中古でC型とD型を購入した。一つはデカールがパリパリ割れて使い物にならなかった。
(追記。ハセガワのC帯、旧キットのE型が今でも再販が重ねられているのを忘れていた)
その意味で、きちんとプラモデルメーカーが米空軍機のデカールを流通させているのは貴重だと思う。プリントスケール製など個別のデカールはヤフオク!などで購入できるが、標準的な購入方法とは言い難い。
デカールの品質も気に入っている。タミヤのスーパーハードのような強い軟化剤に耐えながらも、筒のような曲がった箇所にも貼りついてくれる。
またコーション類の細かい文字も他社に比べ精密に印刷されている。発色もよい。
そうであるから、貼るにつれてカッコいい仕上がりを目にして愉快になってくる。
ニスの件について再び述べる。
2021年3月発売のE型が、同社によるベトナム迷彩 米空軍ファントムの初出であり、2023年2月に発売されたC型ウルフパック、また今年3月発売のD型ナイトアタッカーでも、複数のコーションマークがつながった状態は維持されたままだ。
考えてみれば、キットがサクサク組み上がっても、夥しい数のコーションマークを貼れとなれば、製作リズムが崩れ、ゲンナリする人が少なからず出るであろう。
何より、機体下面のコーション類は、位置決めと効率のよさの一石二鳥。このニスでつなぐ手法がうまく生かされていると思う。
賛否はあっただろうが、メーカーとしての呻吟が感じられるのである。飛行機模型のいわば宿命に対する一つの回答であると、私は受け止めた。
ニスが気になるなら切ればよいという割り切り方もある。マークがまとまっていなくても、細かいコーション類はニスをさらに切って調整することはままあることだ。
米空軍ファントム キットの行方
さて、私が昨年の初めからファントム モデリングを開始した時、(ベトナム迷彩の)アメリカ空軍ファントムの流通の少なさは、ちょいと不当なのでは? と思ったほどだった。
しかし、ファインモールドが年初からC型ウルフパック、E型の再版、今春はD型ナイトアタッカー、さらにE型サンダーバーズと継続的にリリースしてくれてホッとしている。
ナナニイ ファントムのキットは、2020年のファインモールド製が一つの到達点というか、組み立て方も精巧さも転換期を迎えたように感じている。ハセガワ、フジミの再版がないのがさみしいが、これら従来のキットとファインモールド製を比べるのは、余りに設計時期が離れており、フェアではない気がする。
今後はタミヤがヨンパチのB型からナナニイを派生させてほしいと強く願っている。同社にはヨンパチF-35からナナニイのそれという流れがあるが、ファントムやトムキャットでそれをやった方が売れると思うのだが……。
了