見出し画像

ブルー・ストーン第九話     「異常と黒影」

「黒いロボットの大群に襲われた?えっと...大群ってどれくらいの数です?」

「正確な数は分かりません。しかし、少なくとも20〜30は...」

「そんなに...絶望的な数だ。」

「何とか命からがら逃げ切って身を隠していましたが...」

「そう...ですか。えっとあなたは先ほど、”誰かが仕組んだ”と仰っていましたけど、あれはどういう意味でしょう?」

「えぇ、私は、この工場地帯全域のシステムを管理する会社に勤めておりまして、工場警備ロボのエラーが確認できたので現地調査に参ったのです。私はここに入るなりすぐに工場地帯全域のシステムを統率するメインサーバの点検を始めました。見たところ目立った異常は無かったので、ハード的な問題では無くソフト的な障害だと判断し、プログラムの解析を行ったのです。しばらくの間プログラムを解析していると、警備ロボットが破壊工作を行うための因子がばら撒かれている事に気がつきました。どこからか送り込まれたのか、誰かがシステムに直接ばら撒いたのか...あれは誰かが仕組んだこととしか思えません。」

画像1

「えっとつまり、あなたの見解では、この惨劇は警備ロボットの破壊工作によるもので、警備ロボット達は何者かの手によって操られたと...?」

「えぇ、証拠はありませんが、あれは自然発生するものではありません。」

「困ったな...何か、心当たりはありませんか?その、犯人というか、そのような事が出来る人物の...」

「それは皆目見当がつきませんが、ここのメインシステムはドレス基地局とリンクしていますので、そこからなら出来るかもしれません...」

「ドレス基地局か...かなり遠いな。」

「えっと...私からも質問良いですか?」

「あ、どうぞ。」

「あなた方は、地下から来たとの事でしたが...この工場地帯に地下なんてあるのでしょうか?それに、見たところあなた方は一般人ですよね、どうしてこんな所に...」

「えっと...それは話せば長くなってしまいますが...」

「えぇ、構いませんが」

僕は、このシステム管理会社に勤める男に事の経緯を話した。

SOSの事、ロボットに襲われた時の事、隕石が地球に降ってくる事、スイの力の事。その全てをできる限り詳しく話した。男は当然、信じられないという顔をした。しかし、隕石の事とスイと僕の出会いに今回の件が関係があるかもしれないと話すと少しだけ納得の様子が伺えた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「シバ・エイトです。」男はそう名乗った。

「コノハ・イサムです。隣の彼女は、スイです。」スイがニコリと微笑む。

僕たちは簡単に自己紹介を終え、軽い握手を交わした。

シバはひとまず僕たちをドレス基地局まで連れていく事を約束してくれた。どうやら、マグネティックカーでここまで来たらしく、上手くいけばそれに乗ってドレス基地局まで無事に行けるかもしれないとの事。

「マグネティックカーは、島の中心部に停めてあります。そこまで警備ロボットに出くわさなければ何とかなるかも知れませんが。」

「まぁ万が一の事があれば、この自作の武器で何とかしてみますが…効果があるかは分かりませんけど。」

「あぁ、それは頼もしい。」シバは苦笑しながら言った。

「まずは、外へ出ましょう。」

僕たち3人は階段を下り、マグネティックカーを目指す。

やはり、暗くて歩きにくいが少々目が慣れていたようで僅かにガラクタや段差の凹凸が床に浮かんで見えていたため躓くような事は無かった。

「待って!何か、今聞こえた気がする。」階段の踊場に到着したところで、スイが言った。

「何が聞こえた?」

「分からない。」スイは目を瞑り、しばらく黙り混んでいた。僕もシバも息を飲みながらスイの方を静かに見つめる。周囲の全てが固く沈黙しており、物音は僕たちの呼吸音だけになった。

「見えた。奴らが、来るわ。」

「奴らって警備ロボットの事ですか?」シバは震えた声で聞く。

「はい。もう、すぐそこまで…」

「確定現象なんだね?どれくらい来るんだ?」

「2体よ。そこの扉から…」

僕たち3人は扉の方を注視する。じっと扉の方を見つめていた。

しばらくすると、その扉は大きな衝撃と共に前方に吹き飛び、警備ロボットが姿を表す。そしてこちらの方に黒いボディを旋回させる。奴はレーザの跳ね返りによる位相差で物体の位置を検知しているのだろうか、赤色の光線が胸部の辺りから周囲に放たれており、それが僕たちを確実に絡めとる。


ロボットは僕たちの存在を認識したようだ、ゆっくりとこちらに近づいてくる。階段を上って少しずつこちらに向かってきていた。目の前の光景は巨大風船が膨らむように肥大化していき、まさにスローモーションを見ているようだった。

「コノハさん!!早く階段を上って!!!」シバが叫び僕は驚く。ロボットは僕のすぐ目の前まで来ていたようだ。

何故だか、体が動かなかった。恐怖のためか体の筋肉は完全に僕自身のコントロールが効かなくなっていた。

間に合う気がしなかった。



登場人物

コノハ・イサム:分解屋で機械生命体論者。

スイ:青目で少女の容姿をしたアンドロイド。”確定現象”を見るという不思議な力を持つ。20年間もの間ラザファクシマイルの地下に幽閉されていた。誰が何の目的で彼女を産み出したのかは不明。

シバ・エイト:システムエンジニア。ラザファクシマイルのシステムエラーを調査していた所、警備ロボのシステムに異常を発見。警備ロボットたちの破壊工作に巻き込まれる。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集