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タイピング日記030 / …カナダの先住民の民話… / 池澤夏樹
ベアマンが、お話を始めた…
昔々、女が林の中で薪にするのにちょうどいい松の倒木を見つけた。家まで持って帰ろうと引きずって歩いた。でも、途中、何かに引っかかって動かない。振り向いてみても何もない。引っ張ると動く。だがしばらくするとまた引っかかる。三度目に振り返ると熊が片脚を木に乗せて笑っていた。熊は女に「たくさんの魚がいる浅瀬の音を聞いてごらん」と言った。女と熊は遠いところまで歩いた。一週間も歩いた。そこで夏の間ずっと熊は女に魚を与えて養った。冬になって彼らは冬ごもりのために穴に入った。冬の間も熊は自分の身体から魚や水を出して女を養った。三か月たった時、熊の穴から手を出してみるとそこには柔らかい雪があった。春になっていたのだ。猟師が穴のすぐ外に付いた熊の手の跡を見つけ、熊を殺して女を穴から連れ出した。女は孕んでいた。三か月も熊と一緒に暮らしていたのにまるで一晩だったと女は話した。
女と熊(短編小説「ベアマン」のなかの寓話より)池澤夏樹
wikiより
池澤 夏樹(いけざわ なつき、1945年7月7日 - )は、日本の小説家、詩人。翻訳、書評も手がける。日本芸術院会員。
文明や日本についての考察を基調にした小説や随筆を発表している。翻訳は、ギリシア現代詩からアメリカ現代小説など幅広く手がけている。 各地へ旅をしたことが大学時代に専攻した物理学と併せて、池澤の作品の特徴となる。また、詩が小説に先行していることも、その文章に大きな影響を与えている。
声優の池澤春菜は娘。
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