冒頭で出会うVol.1_パチンコ店にて

外は炎暑だった。店内は、広かったが、冷房が効いていて肌寒い。タバコの煙とクーラーの湿度で靄になって目が沁みる。ミラーボールのような光線が天井からくるくる回っている。男がぼくに怒鳴っている。がよく聞こえない。

右からな、こういうふうにな、と男はいう。

「順番に、押せばいんだいよ、ほら、小遣いだ」

客はパチンコのほうと比べたら半分もいなかった。男はぼくが座る台に寄り掛かって、三つ並ぶボタンに親指の腹を滑らせていく。リールが、見えない。離れた席の台の金属音がよく聞こえた。ぼくは当たり続けているスロットを押し始めた。