ニジマルカさんとプロレス。
1706文字・30min
男が自転車で敷地に入ってきた。
この内容の描写をしたかった。
段落の冒頭だ。たった三行のはずだった。丸一日、組み立てては崩すをくりかえした。描けない。
すごいよ川端康成。すごいよ中上健次。すごいよ!!マサルさん!
藁をもすがるつもりでニジマルカさんのページを検索する。
嗚呼、そんなこと書かれちゃあ、おいらはこのまんま六本木心中だ!! 品川心中だ!! 幕末太陽伝だっ!! …意味不明…
テヤンデェ。するってえと、え、なにかい? 多動性・注意欠陥障がいの男のアルバイトの苦悩じゃあ、いくら必死に書いてもボツなのかい? じゃあ、なにかい? ウクライナ侵攻、北朝鮮問題、中国の新疆ウィグルのジェノサイド、その最中の日本国民の読者へ向けての思考実験の提示。これならテーマとモチーフは最高じゃねえのかいっ?!
新潟の浜に一人の男が上陸した。将軍様からの特務は首都爆破だ。が彼が上陸した列島は北海道はロシア軍に九州は中国軍に制圧されていた。日本列島は無法地帯と成り果てていた。男は首都への道中さまざまな人間地獄を目撃する。人間とは? 男は悩む。男が国会議事堂に到着するとそこはアメリカ軍が占拠していた。男は将軍様の命に反し、列島を救うのだった。
それは次の作品なんだよ!
いやね、あんたはさ。すでに編集者の世界を見て、出版業界の世界をトーシロのおいらたちに精確に伝えんとするのは、よくわかるよ。おいらは、あんたがおせっかいだって言ってるわけじゃあないんだよ。だがね。
そんなこと言ったらよ、みんな自分が書きたい書くべきモチーフを上から押し潰してるってことにならねえかって。「切り取るべき部分」と「伝えるべき箇所」あるいは「伝えかた」ってとこがホカにあるんじゃねえかって、おいらは言いたいわけよ。おいらはさ、そういうことを言いたいんだよ。
お白洲みてえな玉砂利が敷かれた大学教授のチェアーによ、ふんぞりかえってよ。すきま風だらけの三軒長屋にすむおいらたちにはあんたがたは修辞学だか国文学なんだかを教えてんのは、おらあ知らねえよ。でもよ。そういうあんたがた何千萬石ってお偉い御大名さまがよ、やっぱそれを言っちゃあおしめえよ。ってことじゃあねえのかい。
これからやるなら剣道じゃなくサッカーのほうが稼げるよ。ってことじゃあないと思うんだおいらは。もともと剣道やってる奴らは傷つくぜ。
ポップリズムってのかい、ポリリズムつったかポピュリナンチャラとかみたいになるのはいいよ。そりゃあね。
長屋にすんでる庶民はよ。やっぱさ、じぶんの夢をひとつでも持ちたいわけなんだよ。自分で普請にして建てた立派なお家をさ。
やっぱ長屋に住んでる下々の町民のことは御大名さまには、わかってはもらえねえのかなあ。
すがりつきたい時に屋敷に行けばいくで、きさま何者じゃ?! 無礼者! 切り捨て御免! なんだろうなあ。
結局、師匠ってのは、人じゃなくて小説なのかなあ。
大地を震わす和太鼓の律動に、甲高く鋭い笛の音が重なり響いていた。熱海湾に面した沿道は白昼の激しい陽射しの名残りを夜気で溶かし、浴衣姿の男女や家族連れの草履に踏ませながら賑わっている。沿道の脇にある小さな空間に、裏返しにされた黄色いビールケースがいくつか並べられ、その上にベニヤ板を数枚重ねただけの簡易な舞台の上で、僕達は花火大会の会場を目指し歩く人達に向けて漫才を披露していた。
又吉直樹・「火花」の冒頭より
こりゃ。個人的に、逆の意味で、参考にする文章だ。
岬。枯木灘。明日、図書館に行ってくるか。
注意
誤解なきように
これ書かないと、素人の人って誤解するんだけど。雑誌でも、バチバチやり合ってる作家さんいるけど、あれってほとんどぜんぶはプロレスですよ。小料理屋でばったり会って「ニジさんもっと書いていいよ」「そっちもディスってください。このチャンスで一冊でも売りたいですから」とか言ってるんだから。
文字を唯一の武器にする。それが作家ですよね。ただ、どういう姿勢で文字を扱うか。が、作家の個性だとは思うんだけど。
書き手が自分の文章を説明する。書きたくないんだな。
(有料記事は別です。企画モノです)
最近、荒らしというか黄砂がきてるので。