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冒頭で出会うVol.5_踊り場


階段をおりていると踊り場でガニ股でふんばった女がいて、にらまれた。
おれをにらんだ女は、升田道代だった。

小学の当時、おれは升田道代が好きだった。

「模試どうだったよ」

横から語りかけてくる。適当に相槌をうった。

升田道代は踊り場の壁に忍者のように張りついた。

升田道代の身体は女のそれになっていた。

「早慶上智クラスの浅沼美代子って女美人じゃね? 」

左から友人の声が聞こえる。転校する前日にもらった背の高いガラスコップを引越したその日に母が割ってしまった記憶が噴きだした。そんな記憶を、十年も経ったこんな場では升田道代に直接いえない。

大人の女になった升田道代は、予備校生なのに小学のままオカッパだった。県トップの築城女子高の制服だった。

「おい、聞いてんのかよ」

うしろのやつに背中を押されて、腕を壁に突き立てた。

升田道代の顔が目の前にあった。距離は1センチもなかった。升田の眼のなかに自分が映っていた。

升田道代が息を止めているのがわかる。おれも息を止めた。

升田道代に胸を突きとばされた。

升田道代は階段を駆けあがっていく。おれは揺れる彼女のスカートのなかを、口をあんぐりと開けたまま見つめていた。

「おい、どこみてんだよ」


下から笑い声が聞こえる。 階下に降りきった友人がはやしたてる。

ガニ股で駆けあがる、筋肉の筋がみなぎった大人になった升田道代の二本の足が印象的だった。

「お前、あいつ、知ってるのかよ」

「知らねえよ」

 おれは返した。

- - - - -

壁ドン、やってみたかった。のでやってみた。

ヴァージョンで分けようとしたけど、今回は、これはこれでアリだなと。


書いて感じたこと、

みたことのない、訪れたことのない場所を設定すると、ファンタジーになる。文章のリアリティが欠けていくことに気がついた。(坑道のなかとか思い浮かべたけど、やはりその状況でいきなり出会いの状況構築は難しいですね)


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蒼井瀬名(Aoi sena)
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