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金木犀

甘い香りがした。

ちょっとずつ肌寒くなってきて、朝晩寝難いこともなくなった。季節の変わり目によく体調をくずす私は、例に漏れず夏から秋の変わり目に体調をしっかりと崩して、布団に横になる日が続いた。仕事に行きがてら、布団とパソコンに向かう日々。

体調も良くなってきたつい先日のことだった。朝仕事をするために足早に駅に向かっている時にふと甘い香りが鼻先を掠めた。

金木犀だった。
一気に私の体の中を秋が駆け巡る。短い秋という季節を目一杯感じさせてくれるその香りが、幼い頃より大好きだ。香水やスカートのデザイン、様々なところに飾られる金木犀が美しい。この時期は出歩くのがより一層楽しくなる。

私が今住んでいる家から駅の間に、いくつも金木犀が立ち並んでいる。集合住宅の壁沿い、古民家の庭。特に古民家の庭の金木犀がとても大きくて、この時期散歩中の御老人やご家族、若い方問わず家に帰りがてら足を止めて見上げて思いっきり香りを吸い込む人が見受けられる。私も立派にその一員だ。空に向かって、すう、と息を吸い込むと鼻から甘い香りが抜ける。梔子も好きだが、この金木犀が一等好きだ。

そしてとうとう、今日。窓を開けたら外から甘い香りが家の中にはいってきた。天然のルームフレグランスのようで、とても心地よかった。

書き綴ることができなかった1週間強、いろいろ考えることがあった。何か形にできればいい。小さな幸せをコツコツと拾える自分で在りたい。

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