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短編小説

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#恋愛小説

電話の後で

 ヴ……ヴ……ヴ……。
 スマートフォンのバイブレーションに仕事机の天板が共鳴して、しんとした部屋に大きな音が響いた。
 煮詰まった頭を抱えてパソコンのディスプレイに向き合っていた僕は、突然鳴り響いたその音に驚き、椅子の上で跳びはねた。
 机の端に置いたスマートフォンに手を伸ばし、点灯したディスプレイに映しだされた名前を確認する。
 煮詰まっているのを知っているから、担当編集者は、今僕に電話をかけ

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消せないギフト

 目を覚ますと、ベッドの上には俺1人だった。
 カラーボックスのいちばん上に、寝巻きとして貸したスウェットが綺麗にたたんで置いてある。昨夜泊まった恋人は、どうやら出かけたようだ。
 サイドテーブルには、メッセージの書かれた一筆箋が残されていた。
 
『おはよう。
 一足先に目が覚めたので、出かけます。
 友達と買い物に行くつもりです。
 今日は、そちらも予定があるんだよね。
 気をつけて行ってらっ

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