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ソニックがおこって雷を落とした絵(S.Yくん)
この記事は、2021年3月31日に行われた教室の様子です。
僕はS君のことを以前から知っていたのだけど、教室に来てくれたのはこの日が初めてだったよ。
彼のことはずいぶん前から知っていたし、彼も僕のことをよく知ってくれているにちがいない。そして僕はS君にとっての一番の理解者で、誰よりも彼の味方でありたいと思っている。
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僕は子どもたちが描く絵の世界がとても好きだ。
子どもたちとのコミュニケーションを、僕ら大人は手っ取り早く、ついつい言葉に頼ってしまいがちだけども、子どもたちにとっての言葉はまだ覚えて間もない未熟なツールだってことを忘れてはいけない。
彼らの思っていることや、感じたこと、考えていることに触れるためには、言葉よりも身振り手振り、そして絵画表現のほうがもっと具体的で、鮮明で、柔らかい心の部分を表しているんじゃないかなって気がしている。
絵を描くとき、僕ら大人たちの多くは、頭でしっかりと考えてから描こうとすることが多い。
テーマを考え構図を決め、入念にスケッチや下書きを描き込んでから、ようやく画面に線を描き始める。
つまりその完成形がイメージできないと、線一本描くことさえできない。
とっても不自由で窮屈。自分で気づかないうちにたくさんのルールを作り上げて、絵を難しいものにしている。
何をどう描いたって、誰かに何かを評価されるわけでもないのにね。
絵って、とっても自由だよ。
子どもたちはみんな、そのことを知っている。
思ったこと、感じたことが素直に手先から表されていく。
さらに言うならば、別に何にも考えてなくてもいいんだ。
「わぁ、この色きれい」
そんなことを思いながら、心の感じるままに指を動かしていく。
気がつけばほら、素敵な作品が出来上がっている。
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今日S君が最後に描き上げたこの作品は、画用紙の上でストーリーが展開しながら描き込まれていく絵。
すごく自由で楽しい絵。
贅沢なことに、この絵の描き始めから描き終わりまでのあいだを、僕はずっと隣で見させてもらった。
まるでS君の心の中に入れたみたいでとても楽しかったんだ。
本当はS君をここに呼んできて、彼の語り口でこの絵を解説してくれた方が100倍面白いんだけど、役不足ながら代わりに僕がみんなに伝えられたらと思う。
絵を描きながら、S君がぶつくさと楽しそうに呟いていたことを、淡々とまとめただけなんだけど。
ポイントは、少しずつストーリーが進んで、それに合わせて絵が描き込まれていくってこと。
まるで一本のアニメーション作品みたいに進んでいくんだ。
見ているみんなに分かりやすいように、画面に番号を加えてみる。
①ソニック(©︎セガ)がいた
②道を走っていたら敵が出てきて、攻撃をされた
③怒ったソニックは、
④ボールになった
⑤空には雲が出てきた
⑥大雨が降って
⑦水溜りをつくった
⑧ソニックが黄色の雷が降らせた
⑨もっと強い金色の雷も降らせた
⑩大嵐がきた
ソニックが敵をやっつけた!
映画監督がカメラを降ろすように、S君がクレパスのふたを満足そうに閉めたのを見て、「この絵の題名は?」と訊いてみた。
「ソニックが怒って雷を落としている絵!」
S君はとびきりの笑顔で教えてくれたよ。