『生殖記』、読んだ。
好きな小説家は堂々と朝井リョウと答える私であるが、
新刊『生殖記』も楽しく読ませてもらった。
語り手の口調が朝井リョウご本人に似ていて、
語り手の文章は脳内で朝井リョウの声で再生されるようになった結果、
最終的には朝井リョウがアレそのものなのではないかと錯覚するという謎の着地を決めてしまったわけだが、まぁそれは余談。
「あぁ生きるのめんどくさい」と慢性的に思っている私は、
なぜ世界がこんなにも生きるのに面倒で億劫なのかを丁寧に言語化されているこの本を読んでいる途中、もうそれはそれは生きるのがもっと面倒な気持ちになった。
朝井リョウはここがすごい。
「治安の良い生息地に発生したヒトって本当に暇そう」「ヒトは生産性を手放せない」と皮肉を交えて文字にできてしまうことで、
自分がうっすら思っていたモヤモヤや暗い気持ちをいとも簡単に浮き出してしまう。
そうそう、本当に、みんな暇そうだな!!
ヒトってクソめんどいな!!!何なんだよ!!!
あぁぁどこもかしこも発展発展成長成長うるせぇ!!!!
まさにそう思う。怖い。
でも私は主人公の境遇ではないし、主人公からしたらいいなと思われる側の人間だから、そんな弱っちいことを言うなよと殴られそうだなと思うけど。
自分も成長とか拡大とかそういったものに疲れているんだなと思えたし自覚できたのはすごく救われた気持ちだった。
監視カメラがなくなると洗濯も食器洗いもなにもしなくなるし。
でも結局自分も社会のレースにしがみついちゃっているんだよな。
じゃあ自分にも拡大発展成長を目標に時間を使いたいと思えるものが見つかるのか、見つけられているのにウジウジ言っているのか、そこはまだわからないけど。
うん、いい本でした。
これから嫌な人にであったら「あぁこういうタイプの”個体”ね~っ!!」と
脳内にあの語り手を宿したいです。