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この映画は工藤のおっさんの存在しない「コワすぎ!」| 映画「トンソン荘事件の記録」感想

⚠️ ふんわりとネタバレしています

 映画館で鑑賞。映画館の上映予定を見ていたら目に止まった映画。予告編を見てみたら見たくなってきた。ので公開日に見てきた。韓国映画。上映時間は短め。90分ぐらい。

あらすじ

1992年、釜山の旅館「トンソン荘」で殺人事件が起きた。旅館のアルバイトの男が恋人を連れ込み、隠しカメラで部屋の様子を撮影。しかし、男はその部屋で恋人を殺害してしまう。逮捕された男は、心神耗弱による無罪を主張したが、判決は無期懲役。そして、仮釈放の1年前に自ら命を絶った。その殺害の一部始終が収められたビデオは、その残虐性から当局によって封印された。しかし、検事の間で話題になったのは、殺害の様子ではなく部屋の鏡に映っていたものだった。それは、男でも恋人でもなく、そこにいるはずのない何かの姿。取材班は、その真相を突き止めるべく調査を開始。その様子を記録映画として撮影するが―。

公式サイトより

 もちろんこれはフィクションなので、ドキュメンタリー風の映画、モキュメンタリーってことになる。ブレアウィッチとか、パラノーマルアクティビティとか、放送禁止とか、その系統の作品ってことだね。

感想

 韓国でもこどもの日は5月5日。この映画で豆知識を得た。

 初めのうちは本当に淡々と進むから、これってマジでドキュメンタリーなんじゃないの? って勘違いするほどだった。それぐらいよくできてると思う。韓国映画だけあって安っぽいところが見当たらない。だけど、怖がらせる演出がないからホラーとしてはイマイチだなあと思っていた。ドキュメンタリーとしては面白いんだけどね。

 そんな風に思っていたら、終盤、いきなり雰囲気が一変した。DV男が態度を一変するみたいに。途端に怖くなる。そして、畳み掛けるように牙を剥いてくる。展開が早すぎて理解が追いつかないまま、あわあわしてたら映画が終わっていたという感じ。たぶん、完全には理解できてないと思う。

あ、あと、動物を殺す描写があるので苦手な人は注意。ネコ🐱とニワトリ🐔ね。

言うほどトンソン荘は重要ではない

 あらすじにもあるように、この映画のきっかけはトンソン荘の事件。タイトルも「トンソン荘事件の記録」だしね。事件を録画したビデオには幽霊が映っていた。鏡に少年の顔が一瞬浮かび上がるんだね。映画ではこの少年を追いかけていくことになる。

 トンソン荘事件の犯人は犯行ビデオで出てくるだけで深掘りされることはない。ストーリーに関わることはない。トンソン荘事件を追っていくものと思っていたけど、全く方向性が違っていた。トンソン荘事件の裏側にあるもう一つの事件を追っていくのが、この映画のストーリーになる。

裏の事件

 トンソン荘事件の裏には別の事件が隠れている。トンソン荘のオーナーが過去に持っていた物件、釜山にある民家で起こった事件なんだね。そこでは、一家三人、母親、兄、幼い妹の三人が住んでいる。事件は、兄が母と妹を殺して、自身は焼身自殺した。三人が死んだ凄惨な事件。そして、トンソン荘の鏡に写っていた幽霊はこの兄なのではないか。という推測がされ、事件を追っていくことになる。

 個人的にはトンソン荘事件の映画だと思っていたので、どうしてこっちの事件を追っていくのか、途中まで見ていてよくわからなかった。だけど、映画を見ていくうちに、全て繋がっていて、この事件こそが元凶だってことがわかるんだね。

よく分からないが凄みのある祈祷師

 取材班は裏の事件の舞台になった廃屋を探索する。事件から数十年経っているため朽ち果てた廃屋になっている。焼身自殺をしているため内部は焼けた跡などもある。調査は何もなく終わったが、屋内で一家の写真などを触っていた女記者が調査後にインフルエンザになって入院してしまう。そして、偶然出会った祈祷師が入院した女記者の映像を見て、写真なんて触るから取り憑かれていると指摘する。

 取材班は霊媒師と共に再び廃屋を調査することになる。しかも夜。なぜ怖い場所へ夜に行くのか。なんて思っていると、もっとやべえのは祈祷師だった。祈祷師はニワトリ🐔の首を切り落とすと、器に血を溜め、自分の顔に塗りたくった。戦場で顔に泥を塗りたくる兵士のような凄みがあった。その後、祈祷師は屋内に突撃して、焼身自殺した幽霊なんかと話していたが、特に何も起こらずに廃屋の調査は終わる。いったい血を塗りたくることになんの意味があったのか、一切説明してくれないのがドキュメンタリー感あった。

よくわからない儀式をする祈祷師

 インフルエンザ(本当は取り憑かれて調子が悪くなった)で入院していた女記者の様子がおかしくなって、精神に異常をきたしていので、祈祷師が儀式をして霊をどうにかするらしい。いちいち説明されるわけではないので、僕はそう理解した。

 この儀式がなんとも胡散臭さがある。TRICKの胡散臭い霊能者感ある。隣国だけあって宗教感が似ているのだろうか、よくわからない儀式だけど、衣装や小道具からして割と馴染みがある感じがした。あの霊能者はどこか既存の有名宗教の関係なんだろうか。説明はなかったので僕の知識ではわからなかった。

 祈祷師は女記者に取り憑いていた兄の霊を除霊しようと色々やっていたようだが、結局、うまくいかなかったようだ。映画の結末からして、そう判断するしかない。こういう映画の霊能者って、だいたい除霊できないと思うんだけど、除霊できるケースとかあるのだろうか。まあ、除霊できちゃったら話がそこで終わっちゃうから仕方ないね。 

 結局のところ、映画全体で見て、この祈祷師はなんだったんだろうね。ただの役立たずだったのか、霊能者でも祓えない強い霊という事を示していたのか。うーんよく分からない。

真相が判明してからが本番

 取材班が調査し、取り憑かれた女記者の導きで重要証拠を見つけ、裏の事件の真相に辿り着くことになった。

 スタッフロールっぽいものが流れ始める、これで映画が終わったのか。淡々としてそんなに怖いことはなかったな。と、思っていたら、さらに映画が続いて、今までの事件とは別の記録映像を見せられることになる。

 女記者に憑いた幽霊は消えることなく、どんどん精神を蝕み続け、ついにヤバいことになってしまった。取材班が女記者のもとに駆けつけた時には、すでに姿を消していた。そして、取材班がその行方を追って行った先の寺で……。

 という流れで、唐突に韓国映画らしい強烈な暴力と破滅的展開へ向かっていく。いきなり怖くなって僕はビビってしまった。そして、あまりの展開の急さと速さに理解が追いつかなかった。まさに衝撃的展開というやつ。

 でも、まあ、淡々とした心霊ドキュメンタリーで終わっていたら、日本で上映されるようなこともなかっただろうね。最後の展開がなかったら、面白いけど地味なモキュメンタリーでしかないから。

おわりに

 上映後、僕が思ったのは、この映画は「コワすぎ!」の工藤のおっさんが存在しないバージョンだってこと。工藤のおっさんが存在しないコワすぎ!では、怪しいヤツがいても暴力や金や恫喝で情報を取ることができないし、やべぇ怪異が襲ってきても逃げることしかできないし、怪異に物理で勝とうという気がない。怖いものがいたら逃げてしまう。ナイフで襲ってくるヤツがいるなら、金属バットで返り討ちにすればいい。工藤のおっさんがいるならそれが可能。だがしかし、この映画に工藤のおっさんがいなかった。だから最後はあんな悲惨なことになってしまったんだろうね。

 心霊ドキュメンタリーが好きな人にはおすすめです❤️

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