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映画「嗤う蟲」感想

 予告編を見て少し気になっていた。今週は色々気になるのがあったんだけど、評判を見てこれに決めた。予告編を見た感じ因習村ホラーに宗教でも絡んでるのかな、と言う印象だった。実際は全く違っていたんだけどね。

あらすじ

田舎暮らしに憧れるイラストレーターの杏奈(深川麻衣)は、脱サラした夫・輝道(若葉竜也)と共に都会を離れ、麻宮村に移住する。麻宮村の村民たちは、自治会長の田久保(田口トモロヲ)のことを過剰なまでに信奉していた。
 二人は、村民たちの度を越えたおせっかいに辟易しながらも新天地でのスローライフを満喫する。そんな生活のなかで杏奈は、麻宮村の村民のなかには田久保を畏怖する者たちがいる、と不信感を抱くようになっていく。

 一方、輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、麻宮村の隠された<掟>を知ってしまう。それでも村八分にされないように、家族のため<掟>に身を捧げることに……。

公式より

感想

評価 7.5 / 10

 評価基準はこちら。

 好きと大好きの間の評価。ただ、素直に自分の感情で表せば大嫌いに近い。嫌いだけど評価はしているってこと。

良かった点

 田舎が舞台の映画なんだけど、明らかに方言が愛知県の三河弁なんだよね。しかも、出てくる警察が愛知県警のパトカーに乗っている。聞き覚えのある方言だったけど、違和感なく方言が使えていたと思う。

 村長っていうか、自治会長役の田口トモロヲが怖すぎたね。笑顔がヤバすぎる。あれほどまでに邪悪な笑顔があるだろうか。

 本当に田舎の陰湿なところを凝縮したような描写がすごかったね。見ていてきつかった。

悪いところ

 因習村のホラーと見せかけて、そうじゃなかったところ。因習ではないよね。

 三河弁の使い方が過剰すぎる気がする。あんなにめちゃくちゃ訛ってる人は見たことない。まあ、山の方に住んでる老人はそうなのかもしれないけど、流石に過剰な気がした。

 田舎の嫌な部分のステレオタイプ感はある。こういう描写を安易にすると田舎disに繋がってしまう。

濃縮田舎汁がキツすぎる

 とにかくこの映画、田舎の嫌な部分をこれでもかってほど見せつけてくる。主に人間関係のキツさの部分だけど、選択肢の無さも同様にキツい部分だよね。店も病院も道も選択肢がない。そして、その唯一の選択肢から排除されると生きていくことができない。だから、人間関係に失敗すると詰む。

 もっと言うと、人間関係にさえも選択肢がない。アイツが嫌いだからといって関わらないということができない。村というコミュニティは狭すぎる。しかも、この映画は村から逃げることさえ許さないからね。終わってる。

 この映画、この田舎の嫌な部分を何度も何度も嫌になるぐらい見せつけてくる。本当にキツかった。辛かった。容赦なく不愉快にしてくる。嫌いな食べ物を無理やり口にねじ込まれてるような感じ。ボクは映画が早く終わってくれることを祈りながら見ていた。それぐらい嫌だった。

 だけど、それって、それぐらい人の感情を上手く揺さぶってるってこと。いい映画なのは間違いない。本当にこの映画大嫌いだけど、すごいよくできていることは認めざるを得ない。

田口トモロヲと杉田かおる

 この二人の夫婦役のおかげで濃縮田舎汁が10倍ぐらいキツくなってるよね。一見優しそうで面倒見が良くてみんなから頼られる自治会長。それを支える妻。もちろん、この二人には裏があって、というか、村には裏があってじわじわと嫌な部分が見えてくるようになっている。

 特に自治会長夫婦の存在感はずば抜けていた。邪悪な存在感が凄まじかった。あの村の禍々しさの根源は間違いなくあの夫婦であることは間違いない。

なんなんだよこの怖い笑顔は

文化の衝突

 結局、この映画に出てくる村人たちは、自分たちの上に村がある。村の存続のために個人がある。村のために個人は奉仕しなければならない。という、昔からの価値観。

 都会から来た主人公たちは基本的に個人主義がベースにある。共同体は個人が所属しているものであり、自由に変えることができる。気に入らなければ別の共同体に属せばいい。個人がどれだけ共同体に奉仕するかは個人が決める自由がある。

 そういう価値観の相違から、移住者である新参者の主人公たちがだんだんとキツい立場になっていくという話。物語だけあって、現実で見かけるものと比べてかなり極端になってるけどね。

おわりに

 嫌な映画だった。よくできてる映画だけど二度と見たくない。映画を見て不愉快な気分になりたい人にはおすすめ。

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