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映画「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」感想

 ⚠️ネタバレしてます。

 以前、第二回日本ホラー大賞の受賞作であるミッシング・チャイルド・ビデオテープを見て感想を書いた。

 この映画は30分ぐらいの短編の受賞作を膨らませて2時間程度の長編にしたものだ。はじめは公開規模が少なくて、近くの映画館でやってなかったから見れなかったんだけど、今週末にようやく公開舘数を拡大してくれたらしく見ることができた。特典の小説ももらえた😁

やったぜ

あらすじ

敬太(杉田雷麟)は幼い頃、弟・日向が自分と出かけた山で失踪するという過去を持ち、今は失踪した人間を探すボランティア活動を続けていた。そして、ある日突然母から古いビデオテープが送られてくる。それは、日向がいなくなる瞬間を映したビデオテープだった。
霊感を持つ同居人の司(平井亜門)はそのテープに禍々しい雰囲気を感じ、敬太に深入りしないよう助言するが、敬太はずっと自分についてまわる忌まわしい過去を辿るべく動き出す。そんな敬太を記事ネタの対象として追いかけていた新聞記者の美琴(森田想)も帯同し、3人は日向がいなくなった“山”に向かう…。

公式HPより

感想

評価: 7 / 10

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良かった点

 短編版からの比較になるけど、時間が四倍ぐらいになったから、ストーリーをちゃんと描写できていたよね。短編版はなんか背景が色々ありそうだけど、という匂わせぐらいだったから、説明不足、意味不明感があった。その辺がだいぶ軽減されていた。

 登場人物が増えたことによって世界が広がった感じがするよね。良くも悪くも短編版は内側に閉じていた。世界が狭かった。長編になって映画クオリティになったというか、映画館で流れても違和感のない映画になったと思う。

 短編版と引き続き不気味だった。静けさと間が怖い感じ。染みるような怖さ。人間の根源的な感情に訴えかけるような怖さ。ジャンプスケアがないのもありがたい。

 分かりやすいお化けやモンスターに頼らないのは頑張ってるなって感じがした。ホラーな物語よりも、もっと現実的な怖さなんだよね。山が怖い。暗闇が怖い。隙間が怖い。向こう側が怖い。みたいな感じだね。

悪かった点

 VHSの画質が悪すぎた。さすがに何が映ってるのか訳がわからなかった。ここは短編版の方が良かった。

 ここは短編版から思ってたけど、霊感のある友人の存在。霊感に頼らないでほしかった。霊感のある人の解説によって解釈が固定されてしまうのがイマイチだよね。便利な存在ってことはわかるんだけどね。

 お化けとかで怖がらせてこないから、一般的には分かりやすくない。怖さを理解できない人、刺さらない人も結構いるんじゃないかと思う。

パワーアップ版

 すでに書いた通り、この映画は日本ホラー大賞受賞作の長編化だ。なので、基本的には短編版の内容と同じ。やりたかったこと、やってることは同じ。短編の要素にストーリーと背景を付け足して尺を伸ばした感じだね。そういう意味でのパワーアップ版。

 映像作品としてのクオリティは間違いなくこちらの方が高いんだけど、この作品のコア、本質はどちらも同じだと思う。だから、クオリティは高くなったとしても、面白さは短編版から変わらない。そこはパワーアップできていない。

 短編で表現できるレベルのコンパクトな話なので、膨らませるにも限度があるってことなんだと思う。だから、この作品の場合は、説明不足や意味不明という欠点を消す方向にしたんだろうね。

短編版との細かい差

 まず、短編版では山の中の小さなトンネルみたいな場所で弟の日向(名前は長編版で統一する)が消える。対して長編版は山の中の廃墟に変わってる。これは小さなトンネルが山中のランドマークとして機能しないから、変更になったんだろうね。特典の小説に「迷い家」という解釈があったけど、あれは背筋さんの独自解釈なんだろうか。

 女記者の追加。これは報道という中立性のある視点の追加だろうね。女記者もなんか取り憑かれていたので、中立性があるか怪しかったけど。また、女記者が取材することで、いろいろな情報が出てくるというのも狙いなんだろうね。

 主人公の母親が発見される過程。短編版では霊感友達、司が実家を訪ねて母親と会話してビデオテープを返す。そして、司が電話している隙に母親が自殺してしまう。(もともと母親は自殺していて、司は幽霊に会っていたという解釈もできるけど)

 対して、長編版は母親は最初から自殺していて会うことができない。最初に主人公と司が実家に訪問しているが、家の中には誰もいない。もう一回、司が訪問して家の中を探していくと、母親の自殺死体を発見する。実は主人公は母親の死体を見ていたけど気づかなかった、という事実が明らかになる。この流れの変化は唐突さが薄まって良かったよね。(司が真夜中にもう一度訪問する理由が薄いけど。関係ないけどバースデービデオが流れるところめっちゃ怖かった)

山の設定の明示

 短編版では何が起こっているのかさっぱりわからないところも怖い部分ではあったけど、流石に説明不足感は否めなかった。ぷよぷよもゲームではないことは分かっていたものの、その正体は何のことだか分からなかった。

 長編版では山の設定が明らかになったことで、ぷよぷよっていう存在がどういったものなのか、ある程度見えてきたよね。司も解説してくれたので、山の神さま的な何かなんだろうね。

 この辺は、特典の短編小説を書いていた作者の「近畿地方のある場所について」に似ている感じがしたね。

司の言うことはどれだけ当てになるのか

 所詮、霊感など本人が言っているだけなんだよね。司に本当に霊感があったかどうかは明らかになっていない。それっぽい描写はあったけど、それで証明されるわけでもない。

 司の発言で一番信憑性が問われているのは、廃墟で主人公に言った「お前の隣にいつも日向がいた。俺には見えていた。だから、あれは偽物だ(おぼろげな記憶)」と言う発言だろうね。

 あれは本当のことなのか、それとも、主人公を説得するための嘘なのか。どっちなんだろうね。主人公の隣にいつも日向がいたなら、実家での足音は誰なのか。司が嘘をついついるのなら、彼の言動はどこまで信用できるのか。

おわりに

 この世界には人間の理では解釈できないものがあり、それはすぐ隣に見えないだけであるかもしれない。山や、暗闇の中や、角の向こう側がそういう世界に通じてるかもしれない。

 そういう考え方好きです❤️

 Amazonプライムに短編版はあるので見てみて、面白いと思うなら、映画館に行ってみるといいと思います。

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