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長澤まさみファンクラブ | 映画「スオミの話をしよう」感想

 映画館で予告編を見て、三谷幸喜がこういうタイプの映画作るなら絶対面白いだろうなって思って、即見に行くことに決めたんだよね。

 だけど、なんかTwitter(Xとは呼ばない派)やら映画レビューサイトでめっちゃ酷評してる人がいたんだよね。まあ、レビューなんて個人の主観で好きなように書いてるだけだから、好みの問題でしかないし、僕が面白いと思えるかどうかとは別なので、とりあえずハードルを下げつつ見に行ってみることにした。

あらすじ

その日、刑事が訪れたのは著名な詩人の豪邸。
スオミンが昨日から行方不明だという。
スオミとは詩人の妻で、そして刑事の元妻。 刑事は、すぐに正式な捜査を開始すべきだと主張するが
詩人は「大ごとにするな」と言って聞かない。
やがて屋敷に続々と集まってくる、スオミの過去を知る男たち。
誰が一番スオミを愛していたのか。
誰が一番スオミに愛されていたのか。
スオミの安否そっちのけで、男たちは熱く語り合う。 だが不思議なことに、 彼らの思い出の中のスオミは、
見た目も、性格も、まるで別人…・。
スオミはどこへ消えたのか。
スオミとは一体、何者なのか。
この秋、三谷幸喜真骨頂!
極上ミステリー・コメディの幕が上がる一!

公式HPより

感想

 面白かったと思うよ。間違いなく面白かった。一定水準以上のクオリティの映画だったと思う。2時間退屈することもなかった。少なくとも僕は酷評する気にはならないかなあ。

 とはいえ、明確な欠点もあるので、酷評していた人の気持もわからないでもない。そして、大絶賛するような傑作でもないのは確かかな。ハードルを上げすぎなければ楽しめる映画だと思う。(公式で三谷幸喜最高傑作と書いてあるのは見なかったことにして)

長澤まさみのための映画

 三谷幸喜、長澤まさみ好きすぎだろ! って思わずツッコミたくなるような、長澤まさみにフォーカスした長澤まさみのための映画だった。 

 物語は長澤まさみ演じるスオミという女が行方不明になったことで始まる。スオミを探すため、スオミの元夫たちが現夫の豪邸に集まってくる。現夫と元夫とその他のスオミ会議が始まる。まさに長澤まさみを中心に話が進む長澤まさみ映画なんだね。

 スオミを好きな男たちが一つの場所に集まって、俺のほうがスオミのことを分かってる、スオミを愛してる、愛されてるとマウント取り合いながら、ひたすらスオミの話を続ける。そして幾度も挟まれるスオミとの回想シーン。どこからどこまで行ってもスオミスオミスオミ。

 長澤まさみが相手の男ごとに人格を切り替えて、理想の女として振る舞う姿は見ているだけで面白かったし、セーラー服姿の長澤まさみという珍しいものを見れたことも儲けものなのかもしれない。最後のよくわからんミュージカルっぽいやつも面白かったしね。

褒めるところのないストーリー

 設定はとても面白いのに、なぜストーリーはあんな形になってしまったのだろう。本当に中身がない。色々活かせそうな素材が大量にあるのに、大して調理することもなく、ぶん投げて終わってしまった感じがする。面白い、つまらない、じゃなくて中身がない。すっからかん。

 一番大きいなと思うのは、スオミの動機の薄さだと思う。スオミは狂言誘拐をして3億円せしめてフィンランドのヘルシンキに行きたかったと言う。その理由は大したことなく、父親の生まれ故郷に行ってみたかったというだけ。そこで何かやりたいとかそういう話でもない。じゃあ、狂言誘拐なんてせずに普通に行けよとツッコんでしまうのは駄目なんだろうか。あれだけ男からモテるなら海外旅行代金ぐらい簡単に作れるだろう。

 結局、スオミは何がしたかったの? がまるで解決しなかった。男を集めて自分が愛されてることを確認したかったのか。男たちを弄んで楽しみたかったのか。たぶん、どれでもなくて、大した目的もなくふわふわした計画を実行しただけとしか思えない。

 そもそも、スオミは男たちの理想の女を演じる理由もいまいちわからなかった。面白いけど、どうしてそんなことするの? 男の理解がないことが不満なら、本来の自分を出せる男と付き合えばいいんじゃないの? あらすじに「スオミとは一体、何者なのか。」ってあるけど、映画見終わったあともそれはわかんなかったよ。何者なのさ。

 スオミの動機がしっかりしていれば、スオミのキャラクター造形ももっと良くなったんじゃないかなと思う。そうなれば、各エピソードが噛み合って全体のストーリーが盛り上がったんじゃないかな。ストーリーだけで見るなら、正直、吉本新喜劇の方がまともだと思えるレベルだった。どうしてお金のかかった映画でこんな事になってしまったのだろう。不思議だ。

ベテラン俳優陣のがんばり

 全体のストーリーは本当に空気みたいなものだけど、個々のエピソードは面白いんだよね。それぞれのキャラクターの個性が存分に出ていて、それを演じるベテラン俳優たちの演技が輝いていた。僕は金持ちドケチ俗物詩人の寒川と、スオミの高校時代の先生と、無関係なのですげー気楽な刑事の部下、この三人のキャラが好きだった。

 長澤まさみも男一人ひとりに対応するキャラクターが違うから、一人何役もやってるみたいなもんだし。特に、最後のネタバラシのシーンの一人百面相みたいなやつは笑ったね。

 だけど、個々の面白いエピソードはいっぱいあるのに、ストーリーと全然噛み合わないんだよね。ぶつ切り。エピソード同士の相乗効果がない。エピソード同士が融合し合って、全体のストーリーに回収されて、最後に予想もつかないエンディングへ向かっていく、って流れになっていたなら傑作と呼べる作品になったんじゃないかと思うんだけど、残念ながらそうはならなかったね。

おわりに

 ネガティブなこと結構書いたけど、でも面白いは面白いんだよ。傑作でも名作でも秀作でもないけど、面白い。面白いんだ。なんか気分転換になるような愉快な映画が見たいとかだったら、オススメできる映画だと思う。あとは長澤まさみのファンならセーラー服姿は必見なんじゃないだろうか。


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