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映画「私にふさわしいホテル」感想

 2025年初の映画館行って参りました。2025年一発目は何を見ようかと思ってたんだけど、去年の年末に公開になったこの映画の感想が目に入って、評判が良かったから見てみることにした。

 原作は未読。

あらすじ

新人賞を受賞したにも関わらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)。その原因は、大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)の酷評だった。

名だたる文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、文豪気分に浸り原稿用紙に向かっていた加代子の元に、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄(田中圭)が訪れる。遠藤から、上階に東十条がカンヅメ中だと聞かされた加代子は、「東十条の原稿が上がらなければ私にもチャンスが……」と、不遇の元凶である東十条への恨みを晴らすべく、奇想天外な作戦で執筆の邪魔をし、掲載のチャンスをつかみ取ることに成功する。

この事件から、加代子と東十条の因縁の対決が始まる!

一向に作家デビューできない加代子は東十条と戦い、自分の才能と戦い、デビューできるかと思いきや蹴落とされ、ついには味方であると思っていたはずの遠藤の裏切り・・・

「私は私の夢を叶える!」と、何度でも立ち上がり、不屈の精神と荒唐無稽な奇策で理不尽な文学界をのし上がっていく加代子。果たして、加代子の作家への道は!?

公式HPより

感想

 とても楽しい映画だった。終始愉快で楽しいシーンが多くて、退屈しなかったね。年間ベストみたいな派手な映画じゃないけど、気楽に安心して見られるコメディだった。ボクはこういう作品大好き。

 特に主演ののんがとてもイキイキして良かったよね。クセが超強い新人小説家の役で、場面場面で服装や感情や言動の振れ幅がすごいんだけど、役に負けることなくめちゃくちゃハマってた。アップのシーンが多かったけど、それに負けない顔面力もすごいかったね。

舞台は昭和

 1980年代が舞台になる。まだPCもなく(普及していない)、ワープロもなく(普及していない)、インターネットもなく、作家が原稿用紙に手書きしていた時代。スマホもガラケーもポケベルもない時代。わからないことを検索できない時代。素人が小説をWEBに発表できない時代。紙の本しかない時代。大御所作家に権威があった時代。

新人小説家 VS 大御所小説家

 基本的には、新人小説家の中島加代子と、大御所小説家の東十条宗典の不毛な争いで話が進む。小説家の争いだから当然アクションはないし、会話劇が中心になる。二人の不毛でバカバカしい争いをユーモラスに描いている。教養がある同士だからなのか、争いが下品にならないのがいいよね。見ていて楽しい争い。

 この二人、対立しているからといって憎しみ合っているわけではないんだよね。加代子は東十条の著作を全部読んでいると何度も公言しているし、東十条の娘が父親の小説をめちゃくちゃに貶していても、それをたしなめてさえいる。加代子は東十条の攻撃に対して反撃しているに過ぎない。むしろ、ある種の尊敬をしていて、自分を認めない腹いせで戦っているようにも見えた。

 東十条はどうなんだろうねえ。世間が望む大御所小説家を演じているようにも見えた。だから、新人小説家を叩く頑固ジジイみたいな役をやっているのかもしれない。わかんないけどね。でも、作中の印象からして、加代子を憎んでいたわけじゃないよね。

イケメン編集者

 で、この二人の争いの間にいるのが、田中圭演じるイケメン有能エリート編集者の遠藤。ビシッと高そうなスーツ着て、イケメンで顔近いし、バブル頃のできる男感すごいし、タバコスパスパ吸ってるし、絵になる男だねえ。

 加代子と遠藤との恋愛要素とかあったら興ざめだったけど、どちらも異性とは全く思っておらず、遠藤は既婚者なのでそういう要素はなかったのがよかったね。同じ意味で、加代子と東十条も生々しい関係にならなくてよかった。ドロドロのドラマが好きな人はそういうことしがちだから。

ふさわしいホテル

 タイトルにもなっている【私にふさわしいホテル】というのは、山の上ホテルのことだ。こんなタイトルなんだから、ホテルが舞台で、全てがホテルの中で完結するような話なのかなと思った。だけど、実際は山の上ホテルが出てくるのは初めだけで、あとは別の場所で話は進んでいく。ホテル要素序盤だけ? と思っていたら、終盤、また山の上ホテルが出てきた。

 つまり、どういうことかっていうと、
・序盤:文豪が愛したホテルにふさわしくない新人作家の加代子。
・終盤:文豪が愛したホテルにふさわしい売れっ子になった加代子。
「ホテルにふさわしい私」になる物語だったんだね。

 終盤、ふさわしい私になった加代子は、売れっ子になったことに満足していなかった。むしろ、不満、憤り、全然満ち足りていない。ただ、売れっ子になるだけの面白ストーリーじゃなくて、創作者としての熱の片鱗を所々で見せてくれるのもよかったね。最後、東十条が自室に閉じこもって原稿用紙に向かい合ってるところとか、再び熱を取り戻した感じが良いね。

おわりに

 好きなタイプの映画を年始から見られて幸せです😊

 2時間楽しい気持ちになれる映画なのでおすすめです。

 自分がコメディ大好きだと改めて気づくことができてよかった。今年はホラーとコメディを意識してみていこうと思う。

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