父との話
結婚式を決めた2週間後、父が倒れた。
状況を聞いて呆れたし、心配する気持ちは湧かなかった。
夕方に再び入った電話で、容態が想像以上に深刻であることを知った。
入院して2日後、1人でお見舞いに行って、変わり果てた姿の父に、泣きながら結婚式をすることを伝えた。初めて買った病気平癒のお守りと、その場で書いた手紙を、目覚めたら見える位置に吊るしてもらった。
子どもの頃はアルコール依存症の父に対して酷いことを思っていて、その時の言霊が時差で発揮されてしまったのかと思ったりした。
わがままだけど、生きてほしいと思った。
一部の友人に「父の回復を祈ってほしい」と連絡した。
しばらくして、父は目を覚ました。
それからの回復には医療者も皆驚いていた。
父は入院中に48歳の誕生日を迎え、お見舞いに行った際はたくさんの仲間たちからの寄せ書きを見せてくれた。父が愛されてることを、父が生きてる間に知れてよかったと思った。
私は結婚式を挙げることについて、家族から迷惑に思われるものだと考えていた。だから父から「葵の結婚式が励みになる」「結婚式が楽しみ」と言われた時は信じられなかった。
でもお見舞いに行くたびに言ってくれて、励ましてくれて、本当に楽しみにしてくれているんだと分かってきた。
10歳の頃に初めて参列した親戚の結婚式で「花嫁の手紙」という演出を見て、絶対に結婚式をしたくないと思った。
そんな私が父に励まされて、父の参列を喜ぶことになるなんて思わなかったな。
写真は挙式前、両親とのファーストミートの時。
冷めた気持ちでいたのに、廊下の向こうで父の泣き声が聞こえてもらい泣きしそうになった。
見出し画像の撮影:母
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