創作大賞2024感想「弦月湯からこんにちは」
今回は難しいテーマに着手なさっているプロの先生の作品を読んできました。
作品「弦月湯からこんにちは」
作者様 小暮沙優 様
全15話の中で一番は主人公壱子が少しずつ成長していく姿(生き方や考え方が変わった)点と弦月湯のお二方の織り成す心温まるお話です。
もうひとりの主人公、暦くんがジェンダーレスという難しいテーマのさ中にいるところ、壱子さんの言葉で彼は生きる答えを見つけていく。最後は心温まるハッピーエンドです。
最初から出てくる獅子男という不思議な存在がキーになっているのですが、彼の回収は最後にされております。一言でいうと「うまい」
ああ、なるほどな。と壱子さんの夢をみる回数の変化と、少しずつ獅子男の登場シーンが変わっていく様子、最後に向けて彼の姿を悟った時に壱子さんが成長してました。
ひとつの作品で3人の大人が動かされてます。まずテーマが非常に難しい。後半の壱子さんのつぶやきにありましたが、戸籍上は結ばれない。互いの家族の問題点、色々あるけど、ゆっくり解決していくしかない。
性の問題についての小説はなかなか手を出すのが難しい問題です。私の身近なところにも同性愛を許容している家族だったり、息子さんが突然女の子になっちゃった、とか色々ありました。
当の本人のつらみ、悩みをはじめて壱子さんに打ち明けた時、暦くんの中で答えが見つかった時、物語の色が変わりました。最初から最後までクラシック音楽をかけて読了したい物語でした。
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とまあ、ここまで真面目に真面目に感想を書きましたが、どうしても萌えた部分を!!!!(笑)
ガルシーア・ロルカ。何の呪文だろうか・・速攻ググる。
『血の婚礼』なかなかにパンチの効いた雑誌読んでる番頭さん(のちの伏線回収なのでこの最初気になった人は最後まで読むとああwwと納得します)
アントニオ・ガウディとケロリンがある光景を考えたのですが、ガウディの作品って検索かけるとカラフルなトカゲが出てくるんですよ。それをどうしてもイメージしてしまったんですが、違うようだ・・文字って難しい。私はスペインに居た訳ではないので、残念ながらこのスケールの大きいシーンがちょっと妄想できませんでした。
ただ、どうして弦月湯の内装は普通の銭湯と違うのか?という伏線が後半に見事に回収されていたのでとってもすっきりしました。残念なのは私の妄想力のなさ。
4話の時点でもう既に掃除ベテランの風格を示す壱子さん。モップの音が聞こえてきますよ、文字を見て掃除の音がリアルに聞こえてきてびっくりしました(うちはデイサービスなんで・・w)やばい先輩が掃除してるww的な気持ちになってどうでもいい不安に駆られました。
あと関係ないんですけど、グアテマラコーヒーをチョイスしたいずみさんが大好きです!!!!!※私の相棒グアテマラとマンデリン。挽きたてのグアテマラおいしいですよね~!
6話の泣く壱子さんの表現が沙優さんの本職っぽい感じがしました。『横隔膜が獰猛に震えている』
私は呼吸器内科にいたのでこの表現は泣く時にすごい的を得てるなと思います。ただ、普通の人はこういうシーンでまず横隔膜自体出てこないので、流石本職です。その人しか書けない物語の書き方ってこういう事ですよね。
7話は飯テロなので空腹の時に読んだらダメ絶対!
暦くん、うちのお嫁に欲しいな。
人は食が生きがいと私は自分の書いた人生のエッセイにも書きましたが、本当にそれ。美味しいものを食べた瞬間、本当に身体に「沁みる」んですよね。ぼろぼろ泣きたい気持ちをぐっとこらえて美味しいごはんを食べる壱子さんのシーンが目に浮かぶ。
7話がこの作品の中で一番好きです。壱子さんが暦くんの面接でとても大切な事をおっしゃってます。詳しくは本篇をみてくださいね☆
10話で土井善晴先生をリスペクト(笑)この作品、暦くんの笑顔が無敵の麦わらルフィと記載されていたり、リアルに知っているキャラや人物が普通に出てくるのと、銭湯へのリンクが繋がっていたり(笑)なかなか斬新な仕掛けが入ってますwまさかの投稿小説に他HPに飛べるとは。高円寺なら何とかいけなくもないか・・・?
もっとびっくりなのが、
「ねーちゃん、何か聞きたいものある?」
「ジェシー・ノーマンのシューマンが聞きたい」
「承知」
ちょっとまってwwwちょっとまってwwwww
あの、今さらっと言ったけど、普通のご家庭に(しかも銭湯)普通にクラシックスペイン語が転がっているものなのか・・!!いや、でも趣味がそうだとそうなんだよな。伏線というか後の語りで祖母が音楽系の方であったエピソードがあるので、おばあちゃまの趣味からこう脈々と受け継がれているんでしょうかね。NHKの題名のない音楽会だけ楽しく聞いている私には憧れる世界でした(住む世界が違うというか・・)
11話がすごい勢いでごっそりカットされて終わっていたので、投稿文字数の都合なのか敢て語らずの文法なのか、ここもうまいなと思います。
読者がだらだら読んでも面白くない部分はごっそりカットする姿勢すごいな・・。私はだらだら書いてしまうんでこういうスタンスは勉強になる。
後半でジェンダーレスになりたい暦くんの『女の愛と生涯』についての物語を聞けますが、ぜひユーチューブで流してください!!!!因みに、先生の歌声バージョンもリンク繋がってました!ソプラノの心地よい声でうっとりしながら読了。
14話、すごくいい話なんですが、初見の人(特に私のようなあんぽんたん)にはちょっと難しいかもしれません。
献呈ーWidmung
シューマン作曲<ミルテの花>がリスペクトされておりますが、この歌詞がなかなかに重い。というか、一般人だったらこの曲に添えられたら耐えられないのではと言いたいが、それもこれも小説の醍醐味ですよね。空間ごと丸めて暦くんを包み込める壱子さんが懐の広い方だと!!!
ラストに伏線の回収が終わります。
何故お仕事部門じゃないのか?という理由が最後まで読むと分かりました。
難しい恋愛テーマと多様性についての問いかけ、それぞれの答えを見つけて歩いていく姿、ほんと最後まで綺麗にまとまってました。悔しいくらい←コラ
素敵な曲に合わせて是非とも午後のおやつを美味しく食べましょう!
小暮沙優さま、素敵な作品をありがとうございました!
(短編も色々あるのですが、ちょっと期間中に読了難しそうなのでまたゆっくり拝読させて頂きます♪)