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世界無形文化遺産「ティムカット」会場は、ゆるくあたたかい空間だと思った

今日1月20日はティムカットと呼ばれるエチオピア正教(オーソドックス)の祭日である。今日を挟んだ前後3日間がお祭りの期間だ。

イエス・キリストの洗礼を祝うもので、去年UNESCOから無形文化遺産に登録された。2013年のマスカル祭(十字架顕現祭)に続き2つ目の登録とのこと。

観光客も多く訪れると聞いたので同期と一緒に観に行ったのだけど、とても、とてもよかった。


時間が遅くなると混むし交通機関が止まるかも、と聞いたので朝7:30に集合し会場へ。会場はジャンメダというところのスポーツホール、と地図にあった。手前の道路から2度の手荷物&ボディチェックを受けて足を踏み入れたそこは、スポーツホールというより野外ライブの会場のほうが雰囲気が似ていると思う。

ひろーい空間に、ハベシャリブスと呼ばれる主に白を基調とした服に身を包んだ人がたくさん。女性はハベシャリブスと同じ素材・柄のスカーフを髪の周りに巻いている。隠れてしまっていることが多いけど、そのスカーフの下の髪は細かく綺麗に編み込まれている。もう目で楽しい。

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会場に入って最初に目に入ったのは、人がたくさん集まって何かをワイワイしている場所。

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あとからよく見たら、そこかしこで簡易なゲームをしていた。ボールとペットボトルを使ったキックアウトのような遊び、簡易ゴールを置いたPK戦、コイン投げ、トランプ…。

雰囲気は縁日に近いと思った。そこかしこで誰かがゲームに興じていて、観客も一緒に盛り上がっていて。日本で見るような出店はないし、ちゃんとしたスペースもない。でもそれをお祭りの一部としてとても楽しんでいる人々が私は好き。


奥に行くとステージがある。遠目に見た感じだと、高位の聖職者や来賓がいそうな雰囲気だ。ステージの脇にはスピーカーがあってスピーチや「ハレルヤ」といった祈りの言葉がずっと流れている。

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ステージを眺める私たちの横で、人々が膝を折りだした。そのまま地面に伏して、ステージに向かい祈りを捧げている。深い、深い祈り。立ったままでも使い込まれた小さな(でも分厚い)聖書を広げ、読んでいる人もいる。
特定の宗教を深く信仰していない私にも、胸が熱くなるものがあった。

日本ではあまり強くない感覚だから軽視されてしまっているように感じるけど、何かを信じる人々の気持ちって強いし気高い。

敬虔な彼らはとても寛容だった。深く神を信じている自分たちがより前のほうに行きたいとか、写真撮影などもっての外!と言われるかなと思っていたけれど、全然そんなことはなかった。

祈りを捧げる人の隣で記念写真を撮っている人がいる。彼らも信者のようだけど。どこからどうみても観光客感200%の私たちに「こっちのほうがよく見えるからおいで」と前を譲ってくれる人たちがいる。3回くらい、違う人から誘われた。座ってのんびりステージを眺める家族もいる。

信者でない人達がいても、彼らは一向に気にしていなかった。
いつものように「外国人だー」という好奇心の視線はよくあったけど、私たちを除け者にする視線はなかった。とても居心地がよかった。


ティムカットの見どころの一つに、「司祭や僧侶による(聖)水撒きとそれを浴びる人々」がある。ステージの様子を見て、これはまだまだ先かなぁ…と思っていたら会場の奥のほうに水撒きスペースがあった。
同時進行なんだ…!!

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この写真で皆さんに見えるかはわからないけど、多分庭の水撒きホースくらいの威力で撒いてる。人の規模に対してちょっと物足りなさそうな気もする。私たちは浴びに行かなかったけれど、このスペースから戻ってくる人はみんななかなかにびっしょびしょだった。ホースの水を散らさずに直撃する感じで浴びたのだと推測する。


実は私たち、何時に始まるのかも何時に終わるのかもよく分からないまま行った。ステージをしばらく見ていたけれどスピーチや祈りの言葉・歌が延々行われていて終わりが見えなかったし、同時進行のおかげで水撒きも遊びに興じる人々も見られたし、2時間くらいで会場をあとにした。それが正しかったのかはわからない。でも現地の人たちも自由に出入りしていたし、好きに楽しんでよかったんだと思う。

出口に向かう途中、カメラと携帯プリンターを持ったおっちゃんに話しかけられた。これはあれだ!記念写真撮らないかってやつだ。

1枚50ブル(約150円)。いつもはスルーするんだけど、今日はなんだか撮ってもらいたくなった。そうしたらおっちゃん、私たちの前に撮っていた、ハベシャリブスを着たファミリーに「一緒に写って!」と声をかけてくれた。え、嬉しい。おっちゃんの気配り素敵。

その場で手早くカメラからSDカードを取り出しプリンターにセットするおっちゃん。Wi-Fi搭載カメラではなかったらしい。なおプリンターはCanon。

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イエロー、マゼンタ、シアン…と塗り重ねられていく写真。なんか見入ってしまった。
こうして私は、デジタルデータではない記念写真も手に入れた。


イベントのときは「人混みでの犯罪に注意!!」というメールが複数来るのでつい引きこもりそうになるのだけれど、いや行ってよかった。
またひとつ、エチオピアを好きになった。



帰り道。

「お腹空いた…今日はめっちゃティブスの気分なんですけど…」と言ったら秒で「分かる!私も!!」と言ってくれた同期。
我ら、エチオピア隊員。

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