三秋 縋さんの『三日間の幸福』が好き
こんにちは
あおはるです!
本日も、推薦図書をテーマに、好きな作品のどこがどう好きなのかを自分なりに考えてみるという練習も兼ねた試みです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
本日の好きな作品
本日の好きな作品は、三秋 縋さんの『三日間の幸福』
季節的には夏場に読む方がよいのですが、すっきりとした読後感のある恋愛青春系ストーリーを読みたいという方にオススメ。
原題でコミックス化もされています(3巻で完結)。
三秋 縋さんとは?
1990年生まれの岩手県在住の作家さん。
当初、ネットで創作活動をしており、その時に作られたのがデビュー作の『スターティング・オーヴァー』や、今回ご紹介する『三日間の幸福』です。
一昔前は作家になるためには新人賞に応募し編集がついてデビューして、という道しかありませんでしたが、最近の若い作家さんはインターネット上で活動されて自らファンを獲得しています。
すごくシンプルで公平で残酷な世界になったと思います。
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作品の面白さについて
若い頃に小説を書いてみる人の多くは、鬱屈とした青春を過ごし、どうせ自分の人生に幸せなことなど一つも起こらないだろうと自虐的になりつつも、抑えきれない承認欲求を満たすためにモノを書くという特徴があると思うのですが(偏見)、フィクション作品としてアウトプットするには自身の体験を客観視する必要があります。
一言でいうと、「まあいいか」という感覚で、自身が主人公の時はノンフィクションですが、達観することでフィクションとして描けるようになる。
作者の主張を押し付けられている気がしてしまうと、読者はすぐに読む手を止めてしまいます。
とはいえ、すべてがフィクションだと身近に感じられなくなってしまう。
前置きが長くなりましたが、『三日間の幸福』はとてもバランスがとれており、以下の要素で構成されています。
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『三日間の幸福』の構成
・アイデア:寿命と引き換えに大金をもらえるとしたら――
・テーマ:人生に絶望した人が、死の間際に世界をどう感じるか
・物語を作るための設定:寿命を買い取ってもらう
・メインキャラクター:寿命を買い取ってもらった主人公と監視役の女の子
寿命を買い取ってもらうという非現実的な要素はあくまでも死期を感じるというシチュエーションを作るためのフィクションであり、この物語の魅力はキャラクターの現実的な感情の変化です。
人生に絶望している状態の人の寿命が高く買い取られるはずがありません。
現実を突きつけられ、死期も明示された主人公が残りの人生をどう過ごすのか、というのが物語の面白さになっています。
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輝きについて
青春系物語の心地よさの一つに、一瞬の輝きがあります。
例えるなら、自然を訪れた時にふと目に留まる木漏れ日。
美しさに目を奪われるが、すぐに消えてしまう。
しかしいつまでも心に残り続ける。
青春という限られた期間に、誰よりも深く感情を揺らし葛藤する姿に、読者は自らを置き換え感動を覚えます。
本作は、寿命を失うという要素で期間を絞り、死を間際にした人間の目線で輝きを描いています。
作者が描きたいのは、この瞬間的な美しさであり、死や恋愛を扱ってはおりますが、命の価値や愛といった思想は添えられていないので、すっきりとした読後感に繋がっています。
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最後に
好きなものを好きと表現したいという試みで続けている推薦図書投稿。
好きなものは好きなように好きと言えばいいじゃないかと思いつつ、どうしても文章にすると理屈っぽくなってしまうのですが、分解していくことでいつか自分もこのような作品を書けるようになりたいという思いもあったりします。
以上、最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
推薦図書をテーマに「好き」を伝える練習をしています。
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