生まれ変わったら
「生まれ変わったら、何になりたい?」
海を楽しそうに泳ぐ、イルカ?
大草原を優雅に歩く、キリン?
それともやっぱ、人?
わたしは、鳥がいいな。
空高く舞い、体を風に任せて360度地球を感じられる翼がほしい。
でもさ、これって。
わたしが、人を体験しているから、思えること。
人じゃなければ、人じゃないものと比べられないもんね。
ときどきね。
人を、やめたくなる。
親を、やめたくなる。
女を、やめたくなる。
やめたくなる。
心の底ではやめたくないはずだけど、やめたくなる。
人をやっているからこそ、親をやっているからこそ、女をやっているからこそ、そうじゃないものに惹かれたりする。
わたしという存在があるからこそ、わき上がる感覚。
わたしは……。
床に座り、二の腕を両手でつかみ丸くなる。
腕には手のひらの温かさが、手のひらには腕の冷たさが伝わって。
流れた髪の毛が膝をくすぐる。
目を閉じ、わたしでわたしを感じてみる。
紛れもなく、ここに存在している。
分かっている……。
やめたいと思えるものを持っていることは、とても幸せなことだって。
いつの日か、
「生まれ変わっても、また、わたしがいい」と言えたらいいな。
大事にしていきたい。
この体、この心。