見出し画像

手さぐりしかできないけどね

小学校の個人面談に行ってきた。
授業終わりの一番手なので、まだ教室に数人の子供が残っていて先生を囲んでいる。その中の一人が私を見かけて、○○のお母さん来た!と伝えてくれた。
若い担任の先生は、お会いする度に同じ白シャツに黒のパンツ姿なのだが、白黒のバランスをみた時に黒の腰の位置がとても高い。今日の第一印象も足長いなぁだった。親世代より生徒の方に近い年齢と聞いている。ITに強くてiPadの授業が得意。子供達にとっても親しみのあるお兄さんという面も強いだろうか。

家庭で気になる事はと聞かれ、数日前のやりとりについて話した。
お風呂に浸かっている時に声をかけた時、扉越しにぽろりと言った「また〇〇に仲間外れにされた~」「〇〇に叩かれたぁ~」という話。

息子は保育園の頃から、外での出来事をあまり家で話さない。たとえお楽しみ会や遠足に行った日でも、口をついて出てくるのは今目の前にある事象についてだけだ。こちらが聞きたいから水を向けると、あの事ねという感じで話してくれるが、聞かなかったらあちらからは言ってこない。過去よりも今を生きるタイプ?それは彼の個性の一つでもある。

楽しい事も、嫌な思いをした事も、時間が過ぎて場が切り替わると後ろに押し出されるのだろうか。小学校に上がってからは、先生や友達から普段の様子を聞くことも出てきた。そんな事があったの?と驚かされることを周りから聞いたりもして、親としては少し物足りなさも感じなくはない。
ただ、辛い事があったら気がついてやれるかなと心配だった。性質から何かあっても時間薬で押し出して、解消したような気になっていないかな。

そんな息子の様子が最近少し変わってきた。
例えば習い事の帰り道に自転車の後ろに乗せている時や、風呂でひとり湯に浸かっている時なんかに、ポツリと「こんな事があった」と言う。あらためて聞くと、それは楽しかった事より嫌な思いをした事の方が多くて、珍しい!と思いながら、それが息子の成長の兆しにも思って、こちらも前のめりで耳を傾ける。

もちろん相手の立場ではまた言い分も違うだろうから偏ってはいけないと思いつつ、打ち明けてくれたこの機会を大事にしなければと思うので力んで答えがちだ。後からさっきの私の相槌や返答が適正だっのだろうかと考えてしまう。親なのに子の相談に慣れておらずごめんなさい、だ。
とりあえずこの事は先生に伝えてもいいかと聞くと「うん」と言ったから伝えた。

先生は心当たりがありそうな顔をされたけど、その場を見た訳ではないので回答も慎重であった。それは当然である。以降気にして見てくださるとのことなので、私もそれ以上は言わなかった。教室では友達同士で小競り合いや喧嘩もしているけど、みんなあまり引きずっているようには見えないとの事で、年代的な問題として通る道なのかも知れないとも思った。

でも家ではもうちょっと気をつけて見守ろう。
つい嫌な子の相手なんかしなくていいよと言ってしまうけど、今日見た彼らの教室、机の距離、掲示物の様子などから、彼らの社会は小さく閉じられているのだと思い知ったからだ。
「俺に構うな」と態度で示せるほどの強さもまだ持ち合わせていないだろう。

自分自身も小学生の頃は特に、無視や仲間外れや、容姿をいじられて辛かったことを思い出す。
強い子に気に入られようと、当時流行ってた匂い付きの消しゴムをやたらあげたりして、機嫌を取ったりしていた。今思えば痛々しいが、あの頃なりに必死に考えた策だった。
母に相談したかなぁと考えて見たけど、当時私は家でもイイ子ちゃんを演じていたのでしなかったと思う。不登校という言葉はまだ浸透していなくて、お腹が痛くて冷や汗を流していても、無理やり学校に連れて行かれる時代だった。

ある放課後のこと、団地の友達に集団で仲間外れにされて、家の押し入れに閉じこもった事がある。引っ込んだ私を追いかけて家まで来た彼女達は、親に告げ口されるのを恐れたのか、玄関口で私が遊びの途中で急に帰ると言いだして行ってしまったと説明した。(狭いから全部聞こえる)
それを聞いた母は鬼の形相で押し入れから私を引きずり出して、思い切り引っ叩いた。娘の話を聞くよりもその子たちを信じた母に絶望した瞬間だった。

ブルブル…!
母になった私はどうか考えて、連鎖して昔のことを思い出し、気をつけようと心に誓う。

子が言葉にできずに溜めていることに思いを馳せること。
話を聞くこと。
言葉が出てくるまで待つこと。
起きた事だけに目をむけない。
家族は君の味方だと伝えること。

反面教師のおかげでいろいろ理想は並べられるけど、でも果たして出来るかどうかはその場にならないと分からない。

でもこれから体も心も大きくなるにつれ、もっと問題は深刻になってくるだろう。嫌なら学校にも行かなくていいって伝えられる自分でいようと思う。今はまだそんな感じではないから、心の準備として。

とにかく今寝そべってトッポ食べているココは、安全な君の指定席だよ。

興味をもって下さり有難うございます!サポート頂けたら嬉しいです。 頂いたサポートは、執筆を勉強していく為や子供の書籍購入に使わせて頂きます。