恋の迷い道へようこそ (閑吟集25)
「添うてこそ迷へ、添うてこそ迷へ 誰もなう 誰になりとも添うてみよ」(閑吟集)
恋をする、ということは、
心が穏やかにならないことを意味し、
時として出口が見えない迷い道に彷徨い込んでしまうことにもなる。
地図もなく、右も左もわからない道を行くがごとき。
しまし、迷路の上の空には桜も見え、
春の日差しが注ぎ込んでいるのがわかり、
そうかと思えば、間違った道をさらに行くと春の雪が降り注いだりもする。
迷い道のところどころにそのうららかな春の日差しが注ぎ込む場所があり、
そこでの休息はそれまでの道のりを忘れてしまうほどの憩いに包まれて、
そのうちに迷っている事を楽しみ始めたりもするのも恋の道。
「添うてこそ迷へ、添うてこそ迷へ 誰もなう 誰になりとも添うてみよ」(閑吟集)
恋人と添うことができたからこそ、生じる迷いがある。
迷うことを恐れてはいけない。だから、まずは迷わずに誰かと添うことが大切なのだ。
添うてみてこそわかる想い人との迷い道。
添うた後の迷い道が、魅惑のラビリンスなのか、伏魔殿なのか入り口でわかるのなら、人は悩まない。
「添ひ添はざれ などうらうらと なかるらう」(閑吟集)
添うにしても添わないとしても、あの人はどうして、もっとおおらかな気持ちで私に接してくれないのでしょうか。
恋の迷い道の入り口で、もうすでに迷っている気持ちが伝わってくる歌。
自分の愛情が勝っているときの、想い人にたいする恨みがましいながらも愛情をこめた言葉。
迷い道、共に歩くのならば、うららかな春の日差しの中を共に歩くなら、その道もまた楽しいはず。
手を握り合いながら、風の吹くまま、花が舞うまま。
それもまた愉しいこと。
その道に迷い込んで初めてわかる喜びを。