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急に会えなくなった時にわかる想い (閑吟集41)

「一夜来ねばとて 咎も無き枕を 縦な投げに 横な投げに なよな枕よ なよ枕」(閑吟集)

想い人に会える日が決まり、その日までの期間ほど心が躍る日々はないだろう。
その日々が長かろうが短かろうが、その特別な日がちゃんと存在しているだけで、自分の中に不思議な力が注がれるようになる。

そしていよいよ前の日ともなれば、まるで遠足の前の日のように眠れなくなり、想い人が部屋に来るのなら、掃除に励み、料理の献立の下ごしらえに夢中になる。

愛しき人に会える、
その直前というのは、まさに気持ちの高揚が最高潮を迎える時。

ところが運命というものは時に残酷で、想い人に予期せぬ事態が起こり、会えなくなることもあるもの。

それは仕事であったり、家庭の事情であったり、想い人本人にとってもいかんともしがたい事態によるもの。
ただ理由はどうあれ、気持ちが最高潮に達しているときの、いわゆるドタキャンという事態に遭遇したとき、
その一瞬は何が起こったかわからず呆然とするしかない自分がいる。

階段を一歩ずつ上っていってやっと最後の一段を上ろうとしたとたん、
その階段が一瞬にして消滅してしまったような。

想い人の致し方ない理由であれば、それを理解しつつもすねてしまう心理。
何にその気持ちをどこにぶつければ良いのだろうか。

「一夜来ねばとて 咎(とが)も無き枕を 縦な投げに 横な投げに なよな枕よ なよ枕」(閑吟集)

一晩来なかったからといって、罪も無い枕を縦に投げて、横に投げとばして八つ当たり。ねえ枕さん。わかってくれるでしょう?この気持ち。

けれどこんな突然会えなくなったこんな時がもっとも、相手に対する思いの強さを感じられる時でもある。

会えなくなったとき想い人が、表向きは優しそうに仕方ないといってくれていても、実はこんなふうに枕に八つ当たりしてくれていたとしたら。

申し訳ないと想いつつ、それはそれでとっても嬉しいこと。それだけ想ってくれている証拠だから。

だから次に会ったとき、二回分、濃く深く愛してあげる。

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