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あっちこっちに響く音 (宗安小歌集9)


「あなたのこなたの、そなたのこちの あらうつつなや 柴垣に押し寄せて うつつなの衆」(宗安小歌集)

ある程度年齢を重ねてくると、情交は静かに落ち着いてゆっくりとすることを好むようになる。
少しずつ盛り上がっていって、激しいのは挿入後の渦中の時のみ。その前後をじっくり味わうように楽しむのもまた楽しく。
しかし時には男と女が共に性欲が高まっているタイミングが合ったとき、乾いた喉を潤すような情欲に溢れた情交をすることもまたあっても良い。

こんなときは互いに会った時点で準備完了であり、貪るようなキスをするだけで女もしとどに濡れ、下着を降ろした時には、その下着ももうすでに女陰が触れていた部分はどっぷりと濡れてしまっている。

服を脱がす時間も厭うかのように、下半身だけ脱がしあい、前戯もおろそかしにして、すかさず後ろから深々と挿入する。

一気に最高潮にいたり、
その後はくんずほぐれつ、乱れに乱れ体をうちつけあう情欲に狂うのみ。

「あなたのこなたの、そなたのこちの あらうつつなや 柴垣に押し寄せて うつつなの衆」(宗安小歌集)

あっちやらこっちやら、そっちやらどっちやらわからないくらいに二人の体が入れ替わり、ああ、まさに夢うつつ。。私の部屋にいきなり押し寄せてきて、その体を打ちつけるやら叩くやら、まあなんて人。

なんという淫靡な歌だろうか。

女が男に愛しさをこめてしたためたもの。時にはこんなふうに獣のように犯されるのもまた、あなたが好きだからこそ。という意味がこめられている。
古代の女の情念が現代にも漂ってくるかのようで、
あなたにも乗り移っているのかもしれない。

二人の体が、あっちやらこっちやら複雑に絡みあい、ぶつかり合う淫靡な音と二人の狂乱の声が協奏曲となって部屋に響き渡る。
そして終わったとき、ふたりでぼろ雑巾のように倒れこんでいましょう。息も絶え絶えに。

そうなれば、アンコールはいらない。

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