あなたにあ、いたい (宗安小歌集7
「忍ぶ細道茨の木 あ痛やなう 思ひし君に 逢ひたやの」(宗安小歌集)
痛い。という感覚は、普通は誰しもが嫌なもの。
ところがこの痛みまでも恋が係われば必ずしも嫌なものではなく、活力を与える薬になったりするから不思議。
恋において痛いという感覚を最も切実に感じるのは、心からであり、
その痛みは体の苦痛よりもさらにもっとつらい場合もあるが、でもその痛みと上手に共存している自分がいることもわかっている。
痛みを感じない恋があるならば、それは恋とはいえない。
たとえば、逢いたい人に逢いたい、でも逢うことが叶わない。
この時の思いこそ、まさに痛み以外の何ものでもない。
綺麗に舗装され、高速道路のように飛ばして走っていける恋もあるだろう。
しかしその道は走り終えてしまえば、印象に残らない。そのありがたみを感じない。
それに対して、細く曲がりくねり、雨が降ればどろどろになり足を踏み外し、転び、茨に傷をつけられて、必死で進む道。
痛くて痛くてたまらない。でもあなたに逢いたい気持ちが、その道を行く力となる。
そしてあなたのもとにたどり着いた時、体中についた傷は、恋の勲章となるです。
そしてその道は忘れることの出来ない道となるのです。
「忍ぶ細道茨の木 あ痛やなう 思ひし君に 逢ひたやの」(宗安小歌集)
しのぶ恋の道は茨の木が茂る細い道。
ああ、あなたに逢いたくて逢いたくて、痛いくらいなのです。
逢いたいと痛いの韻を踏ませている素敵な詩。
そんな痛みを乗り越えてたなら、今度は二人で違う痛みを楽しみましょう。
逢えない時は、あなたに心の痛みではなく激しい情事の体の痛みの余韻を思い出させるために。
幸せの痛みをあなたにあげたい。