異常気象と異常心情 (閑吟集16)
「花見れば袖濡れぬ 月見れば袖濡れぬ 何の心ぞ」(閑吟集)
人と逢えば、
暑いですね、寒いですね、
という気温の話題が先に出る。
ましてや昨今の激しい気象は、
その暑さ、寒さをさらに極端にするから、
そんな気候の挨拶を交わす機会が増えている。
この気象の激変はあたかも恋をした心理にも近い。
暑く燃えたぎるような恋をしてきた夏が突然終わって、
極寒の冬に身を縮めるかのような。
もしくは恋も艶も忘れ乾ききった心に突如炎の如く恋をして、
溢れんばかりの情が降り注がれたかのような。
だからこそ人は自然現象、
季節の移り変わりに自らの恋のうつろいを重ね合わせ、
その情緒に心をときめかせてしまう。
そしてどの季節であっても、
暑かろうと寒かろうと、
月が天に掛かっている。
この月をあの人も見ているだろうかとか、
そして今日のこの雨はあの人の町にも降っているのだろうかとか。
つまりは恋をしている時の心は普段よりも繊細になっており、自然の揺らぎには特に過敏に反応することは否めず。
「花見れば袖濡れぬ 月見れば袖濡れぬ 何の心ぞ」(閑吟集)
花を見れば涙に袖を濡らし、月を見ても涙に袖を濡らしてしまうのです。
いったい我が心はいったいどうしてしまったのでしょう。
花も月も、恋心を応援してくれる偉大なる自然の味方だが、
雨も風も雷も、あなたの心を存分に濡らすに違いない。
異常気象は最近の現象でも、
恋をした男と女の異常心情は、大昔から変わらない。