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FUDO-KI

今は古代。何かが起きる時代。国が起こる時代。


〈前回までのあらすじ〉
黍国東の外れ″氷川の丘″に「稗(ひえ)」国と「糠(ぬか)」国のヒヌカ連合軍が現れた。三輪支(みわき)、伊世李(いせり)、佐祁間(さじま)が率いている。
黍国も防衛ラインを張り、東では武将 牟羅(もうら)と崔泰烏(つぁいたいう)が防衛に成功。しかし西では石可児黄仁(いしかにこうじん)が敗退。
そして中央には伊世李が率いるヒヌカ本軍が現れる。黍国は楯築鯉琉(たてつきこいる)を中心に迎え撃つが苦戦が続いていた。

~第23話 楯築vs髭麿&鴛巳~

ヒヌカ連合軍の髭麿(ひげまろ)は、黍国軍の百千隊と富田隊を攻め立て、早々に戦場から追い出した。その後、黍国軍の総大将である楯築隊に攻撃を仕掛けた。それに呼応するかの様に鴛巳(おしみ)隊も楯築隊へ攻撃を始めた。防戦に回った楯築隊は、無数の盾で自隊を囲み、または盾を地面に突き刺し、手足を引っ込めた亀のように閉じ籠ってしまった。

[楯築vs鴛巳 髭麿] [百千 片岡vs伊世李]

一方、ヒヌカ連合の本体である伊世李隊は、追ってきた百千隊と片岡隊と対峙していた。思わぬ血縁関係の暴露に大きく揺れていたが、伊世李が場を纏めた。
「我々の敵は粳(うるち)国!今回は粳に与する黍国を叩くために来た!来たが、全てが敵ではないことが解った!故に今は兵を引き上げる!引き上げる我々に攻撃を加えることは許さぬ!良いか、我々は敵ではない!」
有利に戦闘を進めていた伊世李隊の方が退却すると言うのだ。
「双角(もろすみ)の子よ!名を教えてくれ!」
「オレの名は百千 武主実(ももちむすみ)だ!」
「武主実か。我が弟よ、また会おう!」
伊世李隊はゆっくりと退却を始めた。百千武主実も片岡太練(かたおかたねる)も攻撃の指示を出さなかった。その後、伊世李隊は髭麿(ひげまろ)隊とも鴛巳隊とも合流して退却していった。

圧倒的に有利な状況のまま引き上げたヒヌカ連合軍。伊世李の口からは「敵ではない」との内容が語られたが、本当の退却理由とは思えない。では、事実としての理由は何か。

伊世李隊が八女隊と戦闘中、伊世李に対し、密かにある情報が伝えられた。その情報は佐祁間軍からもたらされた。

氷川の丘からの進攻ルート

その情報というのは…。「粟国」の危機だと言う内容だった。「蕗国」から軍船団が迫ってきているというのだ。しかし、ナゼ「粟国」の危機にヒヌカ連合軍が慌てて退却するのか?ここからは順を追って説明する。
 
まず、『ヒヌカ連合』は確かに「稗国」と「糠国」の連合国家である。しかし、ヒヌカ連合が傘下に収めた「酒国」と「杤国」が連合に入っている。更には「粟国」や「稲国」も名を連ねているのである。どう言うことか?
原初、「粟国」は天高郷を中心に大きく繁栄した。次第に隣接する「稲国」をも治めるようになったが、しばしば「糠国」と小競り合いが起こるようになる。それを機に「糠国」に攻め込み奪いとった。時代が進むにつれて「糠国」は独自に政治を行うようになっていくのだが、「粟国」は祖国なのである。

「蕗」国の攻撃ルート

「杤国」の真薦宮に首都を遷した央日比王だったが、宗教を習合させるため、更に宇佐宮に遷都を進めていた。首都では周辺国の安定に努めており、今回の「黍国」への進攻は主に「粟国」と「稲国」から兵が収集されたのだ。

ヒヌカ連合では、「黍国」の一部勢力が「粳国」と繋がっている情勢は入手できていた。「粳軍」に対しては、氷川の丘に留まった三輪支が牽制していた。
そこで「粳国」は新たな作戦をとった。手薄となった「粟国」へ「蕗国」軍を進攻させたのである。もともと両国は友好関係にあり、「蕗国」は平和国家だったため予測できない事態となった。

「粟国」に一番近いのは伊世李軍である。海軍である佐祁間軍と共に祖国救出に当たることとなった。これが今回の退却の本当の理由である。


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