見出し画像

今までの100年と、これからの100年と

「遠野」の話の続きです。
とても奥の深い話なので、もう少し書いてみたいと思います。


いろいろな「オシラサマ」


遠野には「オシラサマ」という地域の神さまがいます。

東北には「いろいろ」な「オシラサマ」がいるようです。

オシラサマは東北地方を中心に分布する民間信仰のひとつで、家の守り神、養蚕の神、目の神、禍福を予言する「お知らせ神」などと伝えられる。
多くは、 桑や竹などを材とする棒状の御神体に衣をかぶせた姿をとり、頭を布で包んだ包頭型と頭を布から出した貫頭型に大別される。

このオシラサマは二戸市浄法寺町の個人宅で祀られていたもので、綿状の衣が特徴的である。

岩手県二戸市浄法寺町/岩手県立博物館 蔵 @遠野市立博物館


いろいろな「神さま」


「オシラサマ」以外にも、「いろいろ」な「神さま」がいるようです。

主人が常に居るという意味の「常居(じょうい)」には神棚が置かれ、いろんな神さまが家族を見守っていました。
神棚には地域の神さまがいて、部屋のどこかにはご先祖仏さまも一緒にいたり。
また、遠野ならではの「オシラサマ」「イクナイサマ」など、人々の間で自然と祀られるようになった神さまも一緒にいました。
この土地で生き抜くためには、多くの神さまに頼り、祈り暮らしていくことが大切だったのかもしれません。

@伝松園


ほんとうにあった話


遠野の民話は、「ほんとうにあった」話として紹介されています。

ファンタジーではない、この土地で起きた本当の話

天狗が多く住んでいた 「天狗森」(90話)
何百頭もの狼から逃げ延びた湿地(41話)
河童が特に多く住んでいる「猿ヶ石川」(55話)
遠野三山の女神の伝説。 末娘の山「早池峰山」(2話)

山男と頻繁に遭遇するため通らなくなった「笛吹峠」(5話)
「和野の何其」が山の神と出会った「愛宕山」の坂道(89話) 
神隠しにあい、 風の強い日に戻ってきた「サムトの婆」(8話)
河童が馬を引きずり込もうとした川「姥子園(おばこぶち)」(58話)

「附馬牛村の何某」という猟師が、焼いた白い石で山男を退治(28話)
長年生きて霊力をもった猿の経立(ふったち)がいる 「六角牛山」(47話) 
60歳を超えた老人たちが 余生を過ごした「蓮台野(デンデラ野)」(111話)
馬を吊り下げた桑の枝から 作られたオシラサマがある 「附馬牛」(69話)

「和野の猟師·佐々木嘉兵衛」が 白い鹿と白い石を見間違った場所(61話)
「小国村の三浦某の妻」が山の奥で遭遇した 大きな家「マヨイガ」(63話)
「山口の孫左衛門」の家を去ったザシキワラシが目撃された「留場の橋」(18話)
「鷹匠(たかじょう)·鳥御前」が 男女の山の神にちょっかいを出した 「続石」(91話)

@伝松園


村社会の生々しさ


なぜ遠野には、たくさんの民話があったのでしょうか。

遠野の河童は、赤い?

川には河童多く住めり(55話)」と書かれているように、遠野といえば河童。
雨の日の翌日には河童の足跡を見ることは珍しくなく(57話)
喜善のひいおばあちゃんも 幼い頃に真っ赤な顔をした河童を目撃しています(59話)
キャラクターとして愛される河童とは対極にある暗く怖い話も収録されて います。

二代続けて河童の子を産み、生まれた河童の子は極めて醜怪で手には水かきがあったので、斬り刻んで一升樽に入れて土中に埋めた(55話)。
河童のような子を産み、村境の分かれ道に持って行って捨てたが、見せものにしたら金になるだろうと思い直して戻ってみると、もう何ものかに隠されて消えてしまった(56話)。

「外の国にては河童の顔は青しというようなれど、遠野の河童は面の色あかきなり」。
遠野で語られる河童について。
河童は口減らし(間引き)された赤子でもあるということ。
寒さが厳しく貧しい遠野では、 育てられない赤子をやむを得ず川に流したこともあったそうです。
「生まれ変わったら水の神様になって俺たちを守ってくれな」と言って流したんだ、と語り部の方も教えてくれました。
川に流した赤子の話から遠野の河童が赤くなったのかは定かではありませんが。

@伝松園


次の100年へ


遠野には、子供のための図書館がありました。

情趣あふれる木造の建物は、2021年7月に開館した施設「こども本の森 遠野」です。
岩手県遠野市が所有する築約120年の旧呉服店の建築部材を生かし、安藤忠雄氏が自費で新築して市に寄贈しました。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00649/110900062/
外観
中庭
中庭から見た裏手外観
内観

安藤忠雄さんが寄贈した本の森は他にも、
2020年に大阪・中之島、2022年神戸、2024年熊本にオープン。
2025年に松山にオープン予定だそうです。

「こども本の森 遠野」の開館2周年を祝って、
安藤忠雄さんのメッセージがありました。

2周年、おめでとうございます。
「こども本の森遠野」に集う子どもたちがすくすく成長し、
文学の聖地遠野から、世界に羽ばたいてくれることを期待しています。 
100年がんばって、日本を立て直してもらいたいと思います。

自然とともに生き、たくさんの「お話」が生まれた地。
自然の厳しさに翻弄され、多くの神に祈ったこれまでの100年。

そして、次の100年へ。

私たちは何を伝えていけるのでしょうね。

=======================

「50代からの未来をつくる」サービスを展開中

=======================

※よろしければ他記事もどうぞ


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集