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大きな木に会いにゆく #01 塚崎の大楠
パワーが足りない時には、大きな木に会いにゆく。
触れてもいい木なら、触ってみる。
触れられないときは、木の近くで大きく深呼吸をする。
とてもとても長い時間、同じ場所で生きてきた木と今、同じ空気の中にいることを感じる。
その木の生きてきた長い年月を思い、その傍らで何百年繰り返された人々の営みを思う。
昨年末、仕事納めの翌日にとある”大きな木”に会いに行ってきました。
2024年もいろいろあったけれど、その木と対面してじんわりと包み込まれるような穏やかな気持ちになることができました。
せっかくなので、会いに行った記録をnoteに残しておこうと思います。これからも続けてみようかなということで、タイトルを作ってみました。今回がその第1回です。
大きな木に心ひかれる
幼い頃から大きな木が好きだったのですが、今回noteを書くにあたり、改めて考えてみました。
なぜわたしは、大きな木に心ひかれるんだろう?
まずはやっぱり、木そのものの存在感。対面した時に「うわぁ、おっきい!」という新鮮な驚きと興奮があること。単純にテンションが上がります。童心に帰るというのか…。富士山にせよ東京タワーにせよ、大きなものを前にすると自然と「おお〜!」となってしまうあの感じ。
でもそれだけじゃない。木と人との、長きにわたる繋がりや営みに心ひかれるのではないか、という気がしています。
今みたいに「国の天然記念物」「県指定の天然記念物」なんて概念がなかった時代。誰かに「伐ってはならない」と命じられたわけではなく、ご先祖様たちが守ってきたから、自分たちも守る、次の世代も守る、その次も…
そうやって受け継がれてきたんじゃないかと思うと、なんだか木がたくさんの人の思いを受け止め、背負ってくれているような気がするのです。
スタジオジブリの映画『となりのトトロ』で、お父さんとサツキとメイが、引っ越してきた家の近くにある大きな楠の木に挨拶をしに行くシーンがあります。
いろいろとごちゃごちゃ書いてきましたが、その時のお父さんのセリフに、大体わたしの言いたいことが全部詰まっています。
「立派な木だなぁ。きっと、ずーっとずーっと前からここに立っていたんだね。昔々、木と人は仲良しだったんだよ」
大きな木を前にするといつもこのセリフが脳内で再生されるんですよね。あと、糸井重里さんの「ずーっとずーっと」の言い方が好き。
佐賀と楠
さて、noteのプロフィールでは「九州在住」とぼんやりさせていますが、わたしは佐賀県出身・在住です。
「佐賀には何もない」と佐賀人自身が自虐する佐賀県。
全国魅力度ランキング最下位なのに、それが話題にすらならない佐賀県。
大学時代、出身を聞かれて「佐賀県」と答えると、「あ…へぇ~」と微妙なリアクションの後に会話が続かない佐賀県。(岐阜県出身の子に「大丈夫、岐阜も大体微妙なリアクションされるから!」と励まされた記憶あり)
そんな佐賀県にはクスノキが多く、県の木はもちろんクス、県の花もクスの花という徹底ぶり(?)で、県民にとって最も身近な植物と言えます。古い神社やお寺には大体立派な楠がありますし、小学校の校庭にもよくあるイメージ。わたしの母校にも、巨木とまでは言えませんが楠の大木がありました。
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クスの「花」ってあんまりピンと来ない
方も多いかもしれませんね
わたしにとって楠の木は、物心ついた時から身近な存在。この企画が続くかどうかは未知数ですが、会いに行く相手は自然と楠の木が多くなりそうです。
塚崎の大楠(佐賀県武雄市)
前置きが長くなりすぎましたが、ここからは年末にわたしが会いに行った楠のお話です。
佐賀県の西部に位置する武雄市には「大楠」と呼ばれる樹齢2000年越えの楠の巨木がなんと3本もあります。(巨木なので、数える単位は「本」でいいのかどうか迷ってしまいますが、他に数えようがないので)
わたしが会いに行ったのはそのなかのひとつ「塚崎の大楠」。今回が初めましての訪問です。
…と言いつつ、実は過去に「訪問」したことはあるのです。会えなかっただけで。
昨年の夏、一度近くまで行ったのですが、隣接する施設(市民文化会館)が解体工事のためあちこちが封鎖されており、大楠への入り口が見つけられないまま周辺をうろうろし、熱中症になりそうだったので諦めて帰った、という経緯があります。
今回は無事たどり着くことができました。工事用の防壁の脇から小道に入り、少し坂を登ると見えてきます。
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味気ないコンクリートの塀と、電信柱の向こうに大きな木がそびえ立っています。よーく見ると「塚崎の大楠」と書かれたものすごく控えめな看板と、その下に注意書きが。
武雄市にあるほかの2本の大楠(「武雄の大楠」と「川古の大楠」)は、木の周辺が整備されていて観光客も訪れやすくなっているのですが、この「塚崎の大楠」はお世辞にも整備されているとは言い難い印象。
・・・ちょっと扱いひどくない?
とも言いたくなりますが、観光資源になって保護のために近寄れないように柵が設けられるのと、ここのようにあまり観光地化されていないおかげで木との時間をゆっくり楽しめるのと、どちらがいいのか考えてしまいますね。
この日はみぞれ交じりの小雨模様ということもあってか、わたし以外には人の姿もなく、マンツーマンで大楠と対面することができました。
コンクリート塀の内側に入ってちょっとした階段を上った右側、
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木々に囲まれた中の、少し開けた場所にその木は静かに立っていました。
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真ん中の根っこ?幹?が
人が抱き合っているようにも見えてきます
「おぉ〜」
と思わず声が出てしまうほど、とても大きな木です。(残念ながらわたしの写真の技量では伝わらなさそう…)
幹回りは13.6m、根回りは38mの堂々たる巨木で、樹齢は推定2000年と言われているそうです。
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幹の中心部は洞(うろ)になっています。太い本幹はそれほど高さがなく、その両脇から枝が伸びたような不思議な造形。
神聖な感じもするし、不気味な感じもする。どことなくユーモラスにも見えてしまう。両手を高く上げ、大きく口を開けてこちらに迫って来る生き物のようにも見えます。
実はこの木、昭和38年に落雷に遭い、本幹の9m以上が失われてしまいこの姿になったそう。ただ「両手」にはしっかりと葉を繁らせて、今もしっかりと生きています。
市指定の天然記念物ですが、柵などは設けられておらず、近づいて触ることもできます。注意書きには「洞の中に入ることはお控えください」と書かれていたので、中には入らず、木の周りから撮影しました。
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トトロの寝床にはつながっていないみたい
残念
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ねじれたりうねったり、何とも言えない迫力
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洞もまた、その木が生きてきた長い長い年月を感じさせてくれます。
もともとそこにあったものが朽ちて無くなってしまい、ぽっかり空いた空間。代わりに何かがそこに「おわす」ような、神聖な、そしてちょっとだけ恐ろしいような空気を感じます。
ごつごつした表面にそっと触れて、しばし木と交流しました。
この木がこの地で芽吹いたであろう2000年前、ここはどんな場所だったんだろう。この辺りには人は住んでいたのかな。それからどれだけの歴史を見てきたんだろう。落雷で失われる前は、どんな姿だったんだろう、、、
ぼんやりといろいろなことを考えながら、どのくらいそうしていたでしょうか。
スマホを手にした女性が1人、坂道を上ってくるのが見え、それまで独り占めしていた場所を、次の方に譲ることにしました。
今までずっとここにいてくれてありがとう。
また、会いに来るね。
そんな気持ちで塚崎の大楠とお別れしました。
手はすっかりかじかんでいましたが、じんわりとあったかいような心持ちでその場を後にしたのでした。
余談ですが、楠の木肌のひび割れ具合を見て「冬のかかとみたい…」と思ってしまったことも一応記しておきます(笑)
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【塚崎の大楠データ】
樹高18m、幹回り13.6m、枝張りは東西18m、南北15m
推定樹齢:2000年
所在地: 佐賀県武雄市武雄町大字武雄5563-2 文化会館北側
(2027年春頃まで文化会館解体・整備工事が行われますが、大楠の見学は可能です)
追加情報として、ここから徒歩5分圏内にTSUTAYAが図書館事業に参入したことで話題となった「武雄市図書館」や、武雄神社の御神木である全国7位の巨木「武雄の大楠」もあります。
「武雄の大楠」については、いずれまた別の機会に。