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大きな木に会いにゆく #02 与賀神社の大楠
少し前のことになりますが、1月にしては日差しのあたたかいよく晴れた日に、とある神社の御神木に会いに行ってきました。
佐賀県立美術館で開催されていた『桃山三都』展(12.6-1.29)のために久しぶりに佐賀市内までお出かけ。せっかくなら神社巡りとかしたいな~とリサーチしていたところ、ここだ!というよさげな神社を見つけました。
それが与賀神社(よかじんじゃ/神社のHPの表記は與賀神社)。
①県立美術館から徒歩20分程度
②歴史ある建造物が残っている
③御神木が樹齢1400年の大楠
④お堀端を歩いていけばいいので、方向音痴のわたしでも迷わずたどり着けそう
ということで、与賀神社に参拝&大楠に会いに行くことに決定!
佐賀県立美術館はかつて佐賀城があった「城内」という地区にあり、この城内地区はお堀に囲まれています。
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晴れた日は最高ですね
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(望遠レンズがないので遠い!)
お堀を右手に眺めながら進み住宅地の路地に入って少し進むと、それらしき建造物が見えてきました。水路にかかる石橋、丹塗りの楼門とその奥に大きな楠の木が見え、よかった〜と胸を撫で下ろします。
お散歩、街歩きは大好きなんですけど、重度の方向音痴なので「見知らぬ土地」で「目的地にたどり着く」のは本当に苦手…(地図アプリを使っていたにもかかわらず、2回道を間違えました…)
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佐賀市内には水路が多い
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金具と鉄柱で補強されています
「三の鳥居」慶長8年(1603年)建立。
佐賀藩祖鍋島直茂の朝鮮出兵からの無事の帰還を祝って、直茂夫妻から寄進されたものだそうです。午前中に観た『桃山三都』展からの流れで見るのにふさわしい歴史的建造物です。
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石橋も鳥居同様、直茂夫妻の寄進によるもので、擬宝珠(ぎぼし)に「慶長十一年」(1606年)の銘があるそうなのですが、見落としてしまいました。こちらも重要文化財。400年以上経っていますが渡ってみてもしっかりしていて現役バリバリの石橋です。
鮮やかな丹塗りの楼門はそれより古く室町後期の建立とされ、佐賀県内で最も古い木造建築物(重要文化財)。古色蒼然とした楼門も風情があって好きですが、こうやって丹を塗り直すことによって創建時の姿を今に伝えているのもいいですね。この神社、楼門が、地域の人々から大切にされてきたことが伝わってきます。
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楼門をくぐり、まずは本殿に参拝。
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江戸中期の再建だそうです
参拝前に手水で手をお清めしているときに、とても大きな木が本殿の左脇にあるのが目に入っていたので、参拝後は吸い寄せられるようにそちらへ向かいました。
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大きい!全然写真に収まりきれない!本殿の屋根よりも高く、力強く天に向かって伸びており、これだけ大きいのに幹や枝葉が生き生きとしています。
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木の周囲をぐるりと回って御神木のパワーを浴びました。
この木の裏側に回り込んだ時に、本殿の真後ろにも大きな楠があることに気づき、そちらへ向かいます。
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しめ縄が巻かれていないので御神木という扱いではないようですが、これも大きくて立派な木です。この木には触ることができたので触ってご挨拶。
ふと視線を上げると、本殿越しに何やら巨大な影が目に入ってきました。
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なんだあのラスボスのごとき存在感!!
本殿を遥かにしのぐ、ものすごく巨大な楠がある!!!
正面へ回り込むと…
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(だいぶ離れて撮影しています)
こちらが、樹齢1400年の与賀神社の大楠です。
いや~、あなたでしたか!
てっきり左のお方だとばかり…(ちなみに最初に見た本殿左脇の楠は樹齢1100年だそう)
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この柵から大胆にはみ出した根っこ、何だか既視感があるような…と思っていましたが、お寺でたまに見かける「ご本尊の手から紐が繋がっていて、それを握ることで参拝者が仏様と結縁(けちえん)できるアレ」みたいです。(正式名称がわかりません…伝わるといいのですが)
ここはお寺ではなく神社なので、仏様ではなく御神木が参拝者に手を…もとい根を差し伸べてくださっているようにも思えてきます。
ということで、ありがたく御神木と「結縁」させていただきました。上ばかり見ていたせいで根っこにつまずいちゃってごめんなさい、とお詫びしながらそっと撫でました(笑)
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巨木には付き物の洞(うろ)は埋められていました。ふさがれてはいますが、人一人は入れそうな大きな穴です。
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「我に迫る三千年の楠青葉 月斗」
細かい説明がなかったので「月斗 俳人」で調べたところ、青木月斗という子規門下の俳人のようです。この句がいつ頃読まれたのかは不明ですが、名護屋城趾にも句碑があるようなので、句会に招かれて佐賀を旅していたのかも?
御神木の大楠は、月斗が訪れた頃には土地の人から「樹齢三千年」と言われていたのかな。
そして「我に迫る」という感覚は、この木の前に立つとよ〜くわかる。こちらに迫ってくるような圧倒的な迫力があります。
与賀神社のHPによると、
県の指定書には、「根回り 25m50cm、枝張り 東西37m、南北25m、幹の中に、地上5mのところから枝分かれ枝葉が繁茂しており、六畳敷余りの空洞があるが、樹勢は旺盛で樹相は優美であり、県内における代表的な楠の巨木として価値が高い」とある。
とのこと。埋められている部分はそれほど大きくは見えませんでしたが、その中には六畳敷の空洞があったんですね。六畳って学生時代に住んでたワンルーム並み!!生活できちゃう!?でも六畳じゃさすがにトトロは住めなさそうですね。
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「樹勢は旺盛で樹相は優美」の評はまさしくその通り!
冬晴れの空、明るい日差しの中で対面したせいなのか、神秘的というよりはとにかくパワフルな印象を受けました。
わたしが過去に出会った樹齢千年を超えるような楠の巨木には大きな洞(うろ)があり、大体一人ぼっちで立っています。わたしはそこに何とも言えない哀しみを覚えます。哀しみは共感であり、そして愛(かな)しみでもあります。
ですがこの与賀神社の大楠は、洞が埋められているせいなのか、すぐ隣(実際には社殿をはさんだ両脇)に樹齢1400年と1100年の楠が相棒のように夫婦のように並び立っているせいなのか、巨木特有の哀しみを感じない。「生の明るさ」のようなものがそこにあるように感じました。
わたし以外の参拝客はゼロだったので、結構な時間神社を独り占め。とても良い午後のひと時を過ごすことができました。パワーゲージは間違いなく満タンです!
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与賀神社の大楠さん、そしてほかの楠さんたちも、元気をくれてありがとう。どうかこれからもずっとずっとお元気で!また美術館鑑賞がてら会いに来ようと思います。
【おまけ】
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(ちなみにお向かいは馬でした)
第1回はこちら。
みぞれ交じりの小雨が降る寒い日に会いに行った、神秘的な姿の楠のお話です。