"充実してる風"夏休み
8月も下旬に入り、暑いと言っていた日々も過去のこと。特に大学に通うこともなく、長い1学期がようやく終わった。Instagramには僕より早く夏休みに突入した人々の夏を謳歌する投稿であふれかえっていたが、その頃僕はレポートに次ぐレポートの波にのまれていた。つらい日々を乗り越えて、ようやく夏休みが始まるとなると感動もひとしおで、苦労して手に入れた30単位に愛着さえ生まれる......わけではない。今期の授業はマジで授業感がなかったし、課題あり得んほど多いし、Twitterとか見てても皆不満たまってそうな感じ伝わってくるし、躁にも鬱にもならない健康優良な精神を持つ20歳である自分でさえ鬱になるかと思った。よく1年生とか新生活早々こんな感じになって耐えられるな。5分歩いたら大学があるのに通えないとか、多分自分なら発狂してる。目の前にある教養棟の存在意義考えるだけで5日くらい経ってる。何となくの話だが、東京の大学生ならこの先1年でキャンパスへ通う回数はかなり限られそうな気がするので、そう考えればまだ後期対面の方針を出した弊大学の学生は救われているのかも知れないけど。
と、散々だった一学期だがそんなことはもうどうでも良い。これからは夏休みなのだから授業からは解放されて、自分のしたいことをするのだ。大人数でどこかに旅するというのはなんか自分の中に罪悪感が生まれるし、その地域に何かあっては遅いのでしたくないが、都合が良いことに僕は友達が少なくそもそも大人数で泊まりがけの旅行はあまりしないし、一人で旅することをめちゃめちゃ楽しいと思えるタイプの人間だった。ということで、この夏休みもいつも通り一人で行きたいところを巡るだけの夏休みである。計画実行にあたり、まず札幌駅の自動券売機に政府から貰った10万円を食べさせて、代わりに青春18きっぷとか超格安で話題になった北海道6日間フリーパスを吐き出させる。ありがとう政府、無理しなくて良いから毎秒10万円口座に振り込んでくれ。そうしたら僕は最近日高本線と留萌本線の廃線と宗谷本線の大胆な廃駅を決断してなお、経営が死にかけているJR北海道にまた金を落とすよ。
正体のつかめない忍者みたいなウイルスで世界は21世紀史上最大の混乱になっているが、僕はあらゆるところに規制線が張られた世界でも規制線を越えずに楽しめる気がするので、とりあえず去年の夏休みと同じように手帳を予定で埋めた。経済が回復してくれないと将来的に僕らの世代が暗黒世代になって、1000年後古代ギリシャのように歴史上の記録から抹消されそうなので、迷惑をかけない程度に、そして僕の生活が成り立つ程度に日本各地に赴きそれなりに消費することにした(正直な所どう足掻いても僕らが就職活動をしている頃の景気は冷え切って、ロスジェネを超える最悪の世代になってもおかしくないと思っている)。今年はそもそも夏休みが例年の半分しかないため、こことこことここに行きたいなと予定を組んでいたら自然と夏休みが充実してる風の手帳が完成してしまった。人によって充実とは何かは変わってくるだろうが、僕は自分の知らない景色に巡り会えた、それだけで人生充実していると思えるチョロいタイプである。
そんな感じで埋めた手帳によると、取りあえず9月上旬は紀伊半島を鈍行列車でぐるっとまわり、その後日本海沿いをひたすら北へ向かうらしい。北海道に戻った後はシーズンも終わり人も疎らになったであろう道東と道北を回ろうという計画がたっているようだ。台風シーズンなのに巡るところが悉く海沿いという如何にも予定がしっかり狂いそうなところが心配だが、そこは持ち前の晴れ運で何とかしたい。既に台風が直撃コースで迫っているという事実からはひとまず目を背けたい。半年前にも計画した日本海縦断だが、その時は吹き荒ぶ強風に信越本線が耐えられず泣く泣くつまらない車窓の東北本線を南下したので、この旅は半年かけたリベンジ企画とも言える。今回に関しては宿が富山→新潟→横手なので日本海沿いの列車が動かないと確実に詰むし、伊勢湾台風みたいなルートと規模で台風が来たら多分北海道に着く前に死ぬ。北海道に無事帰れた後は、雨の多い9月に道東道北を巡るこれまたかなり運要素の強い旅程が待っている。今年は道北で大雨が降りやすくなっているのでその点心配だが、結局どんな夏休みになるかは終わってみないと分からないし過剰に考えることはやめておく。
いつも旅が始まったなと思う瞬間は、自分の家から出て鍵を閉めたときではなく、札幌駅西口の改札に切符を入れるときだ。家から札幌駅西口までの20分程度の時間は日常から非日常への移行期間であり、高さ1mもないゲートの向こう側に入った瞬間、ゲージにたまっていた非日常へのローディングが完了し世界は別の場面へと切り替わる。そこからは、あらかじめ行きたいと思っていたと場所にも勿論期待しているけれど、ふとした瞬間に出会う景色の美しさに一番期待しながら列車に揺られる。この夏はどんな景色に出会うことが出来るだろうか。向かった先ではどんな生活が営まれてるのだろうか。僕はこの旅を通して何を知り、何を思うのだろうか。長くも短い夏の旅が一年ぶりにやってくる。
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